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情報通信 ニュースの正鵠
2011年2月28日掲載

ケータイでタッチタイピング

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 先週行われた京都大学の入学試験において、試験時間中に「ヤフー知恵袋」に、数学と英語の問題について解答を求める書き込みが行われ、大きなニュースとなった。

 この書き込みを行った「aicezuki」というハンドルネームの人物は、2月上旬に行われた同志社大学、立教大学、早稲田大学の入試の際にも、同様の書き込みを行っていたという。

 いまのところ(2月28日15時時点)、誰が何の目的で行ったものなのかは明らかになっていない。自分が入試に合格するためのカンニングなのか、世の中を騒がせて喜ぶ愉快犯なのか、それともこのような不正が可能であることを世の中に警告したかったのか。 

 もう一つはっきりしないのは、どうやったのかということ。報道によればケータイからアクセスした形跡があるというが、大人達が普通に考えると、試験を受けている最中にケータイで試験問題を打ち込むことは難しそうに思える。そのため、「試験問題が配られてからトイレに行って打ち込んだのではないか」とか「問題をケータイのカメラで撮影したものを送付して、それを別の誰かがヤフー知恵袋に書き込んだのではないか」と推測する人達もいる。

 しかし、デジタル・ツールを使いこなすスキルは世代間で大きな差がある。今回の事件で、実際にどのように書き込みが行われたのかは別として、今の大学生のケータイ・スキルであれば、試験中に問題をネットに書き込むことは不可能ではないと思える。

 私は昨年の5月に、受け持っている大学の授業の中で、ケータイやパソコンの入力についての簡単なアンケートを取ってみた。

 その結果、「手元を見ないでケータイの文字入力ができる」と回答した学生が約7割(注)。「ケータイとパソコンではどちらの方が速く文字入力できるか?」という質問に対しては6割が「ケータイの方が速い」と回答した。

 もちろん個人差があるので、誰でもできるとは言わないが、ケータイに慣れている学生であれば、試験問題を見ながら机の下やポケットの中でケータイを操作してネットに書き込むことは十分可能だろう(もっとも試験監督に見つからずにできるかどうかは別問題だが)。

 私がこのようなアンケートを行ったきっかけは、「ネオ・デジタルネイティブの誕生」という本。同書の中に、最近の若者はケータイでの文字入力を厭わず、宿題のレポートや卒論をケータイで書く学生までいると記されていたので、自分が受け持っているクラスで学生に訊いてみたのだ。

 アンケートの結果、さすがにレポートをケータイで書いたことがあるという学生は少数(全体の1/4程度)だったが、ケータイでの文字入力を苦にしないというのはまさにその通りであった。

 急速に進歩した情報通信分野では、それぞれのツールに対する習熟レベルが世代毎に大きく異なっている。今回の大学入試不正疑惑を巡る一連の報道を眺めながら、そのことをあらためて思い出した。

※タッチタイピング:キーボードを見ないで入力すること

(注)ご質問を頂いたので補足します。「手元を見ないでケータイの文字入力ができる」というのは、「操作部(テンキー)を見ないで文字入力ができる」という意味です。画面も見ない完全なノールック入力ができるかどうかはケースバイケースですが、普段から打ち慣れているような内容であれば、変換候補も予測できるので可能です。もっとも、数学の問題で使用されている記号などをノールック入力するためには、事前練習が必要になると思います。
コメント頂いた方、どうもありがとうございました。


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