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BRICs PredICTion
2009年4月掲載

まだまだ少ないBRICsの情報

 ICT関連企業でインドを担当している知人が、先日こんなことを言っていた。「海外のキーパーソンをお招きして、ICTトレンドを紹介するセミナーを開催しても、ヨーロッパやアメリカとインドとでは、集客度合いが全然違う。欧米の回はすぐ満席になるのに、インドの回はなかなか人が集まらない」
確かに、インドをはじめとするBRICs(ブラジル、ロシア、インド、中国)やアジア諸国・アフリカなど、「新興市場」と目される国や地域は、世界的なプレゼンスが拡大しているにも関わらず、日本での注目度合いは今ひとつである。実情がほとんど知られていなかったり、偏ったイメージがまかり通っていたりすることも多く、さらにそれが原因して、新たな情報の吸収を妨げる、というスパイラルが働いているようにも思う。

 私が現在担当しているアジアや新興国の動向に対して、興味を持っている人は実際のところまだ少ない。「インドに出張した」などと話すと、「えぇ!?」と驚かれたり、「へぇ。面白い仕事してるね」と引きの入った答えが返ってきたりすることもある。
 とは言え、それは無理もないことかもしれない。試しにGoogleとAmazonで国の名前を入れて検索してみたところ、このような結果になった。

表1:Googleの各キーワードによる検索結果(2009年4月6日時点)
キーワード 検索結果(単位:件)
ブラジル 9,360,000
ロシア 13,700,000
インド 16,500,000
中国※
中華人民共和国
5,509,000
1,380,000
アメリカ
米国
47,800,000
24,300,000
イギリス
英国
14,600,000
1,630,000

[「日本語のページを検索」の結果数]
※「中国」の検索結果数(8,590,000件)から、次のキーワードの「日本語のページを検索」結果数を引いて計算している:
   中国地方(1,160,000件)
   中国新聞(1,070,000件)
   中国銀行(486,000件)
   中国電力(445,000件)
これ以外にも、日本の中国地方に関する項目の検索結果が含まれているものと考えられるため、実際には<国としての中国>を意味する検索結果はさらに少ないものと推測される。

表2:Amazon.co.jpの和書検索結果(2009年4月6日時点)
キーワード 検索結果(単位:件)
ブラジル 1,386
ロシア 10,075
インド 5,652
中国※
中華人民共和国
34,509
449
アメリカ
米国
28,226
2,567
イギリス
英国
10,541
4,251

表1と同様、「中国」の検索結果数(36,364件)から、次のキーワードの「日本語のページを検索」結果数を引いて計算している:
   中国地方(1,855件)
これ以外にも、日本の中国地方に関連する書籍が含まれているものと推測される

 国により件数の多寡はあるが、「アメリカ/米国」や「イギリス/英国」と比較すると、その差がよく分かる。これはあくまで目安だが、日本で得られる新興国の情報が、現時点でどれだけ少ないかという一例になるのではないだろうか。

BRICsで好まれる商品・サービスとは

 日本が、世界の中でもいろいろな面で先進的な国であることは確かだし、そのために、新興国とのギャップがことさら大きく感じられるという点も否めない。しかしながら、日本人がそういう国に対してギャップを感じ敬遠している、まさにこの間に、新興国との関係を着実に深めている人たちがいるのも、また事実である。
例えばインドでは、(ICTからは少し離れてしまうが)韓国のLGやSamusungが、白物家電の「信頼できるブランド」として地位を確立しつつある。インドのニューリッチ層(やはりITエンジニアが多い)には、さながら日本の高度経済成長期のような活気があり、白物家電を揃えマイカーを持つことが浸透しつつある。LGやSamusungは、ここに目をつけ、市場に入り込むことに成功した。
また、OEM生産に強く、世界のネットワーク機器の8割を製造しているといわれる台湾も、インドとの関係を深めている。近年、台湾のネットワーク機器メーカーが、続々とインドに工場を作っていると聞く。台湾はワイヤレス通信機器の製造を得意としているし、台湾政府もワイヤレス通信網の整備に非常に力を入れている。そんな台湾から見れば、携帯電話が急速に普及しつつあるインドは、ハード面・ソフト面ともに輸出するノウハウが豊富な、魅力いっぱいの巨大市場である。

 韓国や台湾のように、新興国市場に対しても果敢な国と、日本との違いはいったい何であろうか。私は、新しく台頭してきている国や地域の<社会構造><社会慣習><文化>などを、いかに多くのひとが認識しているかという点に、ひとつの解があるのではないかと考える。
 <社会構造><社会慣習><文化>は、事業者のサービス戦略やユーザの行動にも大きな影響を与える部分である。通信・放送事業者のサービスラインアップや、ユーザに好まれるサービスのスペックは、これらの要因で変わってくる。例えば、ロシアや中国では宝石をちりばめた携帯端末が話題になる一方、台湾やタイなどではハローキティ端末やドラえもん端末がニュースになったりする。中華圏のテレビチャンネルで人気があるのはスター関連(≒ゴシップ)情報や金融情報だが、インドではそれがボリウッド映画であったり、クリケット情報であったりする。話題になるハードウェア・ソフトウェア、人気を呼ぶサービスは、その国の持つキャラクターによりさまざまである。

 ということでこのコーナーは、成長著しい国・地域におけるICT市場の動向を、ときに社会的文化的な要素も踏まえながら、考えていく場にしようと思う。新興国におけるICTの現状を、ひとりでも多くの方が把握でき、さらに日本との接点を見出し、コラボレーションの機会を考える上でのきっかけになるような、そんな場となれば幸いである。

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