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Enterprise Evolution
2009年5月掲載

クラウドコンピューティングの潮流(2):
Salesforce.comのクラウド戦略

 今回は、Salesforce.comのクラウド戦略について取り上げる。

Salesforce.comについて

 Salesforce.comは米国で1999年に創業されたSaaSベンダーである。同社が提供している主なサービスには、SaaSサービスである「Salesforce CRM」やPaaSサービスである「Force.comプラットフォーム」などがある。

 2009年3月で創業10周年を迎えた同社だが、図で示したように売上高、導入企業数とも順調な伸びを示している(ただし、同社CFOは、2010年度は景気後退の影響などを受け、サービス解約率の増加が見込まれるため、業績は楽観視できないとしている)。

図:Salesforce.comの業績推移
図:Salesforce.comの業績推移
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 Salesforce.comはサービスの質もさることながら、マーケティング巧者としても知られており、その時々の時流をつかむことに長けている。例えば、ここしばらくは「クラウド」という用語を強く意識しており、最近リニューアルされた同社Webサイトのトップページでは、SaaSサービスであるSalesforce CRMのリンク名は「Sales Cloud」、Force.comプラットフォームは「Your Cloud」となっている(本記事執筆時点)。

Force.comによるクラウド戦略

 冒頭にも書いたように、同社は「Force.comプラットフォーム」というPaaSサービスを2008年11月から展開している。このプラットフォームについて、同社CEOであるマーク・ベニオフ氏は、Web上に掲載されたインタビュー(※1)で、興味深いことを述べている。

※1:「米セールスフォース・ドットコムCEOが語る クラウドコンピューティングの本当の正体」参照

 このインタビューでは、同社が2009年にプラットフォームやクラウドコンピューティングのエコシステム整備に10億ドルを提供すると発言している。それを受けてインタビュアーが、その投資に見合う効果が期待できるのかどうか尋ねたところ、マーク・ベニオフ氏は、以下のように答えている。

「こう答えよう。まず日本市場では米国製ビジネスソフトがそのまま通用しない。日本の企業社会の特色はチーム主義であり、アプリケーションソフトは独自に構築する場合が多い。
 しかも、ネットワーク先進国の日本では、パソコンだけでなく、携帯電話やモバイル機器など多様な機器が用いられる。つまり、その下部構造を司るプラットフォームに強みを求めるべきなのだ。実際、当社の顧客である日本郵政には主にプラットフォームを提供している。」

 ここで彼が述べているように、同社は日本の特性を理解した上で、積極的にForce.comプラットフォームを展開することを考えているようである。

Force.comによるクラウド戦略の実際

 Force.comプラットフォームの活用事例は、以下のように大きくふたつに分けることができる。

  1. Force.comを活用したアプリケーション開発
  2. Force.comを活用したアプリケーション展開

 1はForce.comプラットフォームを活用して、自社で使用するアプリケーションを開発することである。マーク・ベニオフ氏のインタビューでも出てきた日本郵政の他、最近ではコンビニ大手のローソンでも採用され話題となった。

 一方、2はシステムインテグレーターやISVが、Force.comプラットフォームを活用して、自社のSaaSビジネスを展開することである。例えば、システム開発などを手がける株式会社ジラッファは、Force.comプラットフォームを利用して、「SmartProject for Salesforce」というプロジェクト管理ツールを提供している(※2)

※2:「ジラッファ、SaaS型プロジェクト管理ツール「SmartProject for Salesforce」をセールスフォース・ドットコムのForce.com プラットフォーム上で開発」参照

 仮にSaaSサービス提供に必要な運用ノウハウなどを持っていなくても、Force.comプラットフォームを利用すれば、容易にSaaSビジネスに参入することが可能となる。

 同社は今年の3月に「Force.comパートナー・プログラム」を発表しており(※3)、今後、このような事例がさらに増えてくることが予想される。

※3:「セールスフォース・ドットコム、パートナー企業のクラウドビジネスを支援する「Force.comパートナー・プログラム」を発表」参照

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