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2009年10月5日掲載

ICT政策と企業のBCP(4):
CO2削減に向けた政策事例と評価に向けた標準化の動き

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 鳩山首相が「1990年比25%の温室効果ガス削減」を政権の目標とし、経済産業省をはじめ、政府全体目標達成の為の方策を検討している。

東京都の「温室効果ガス排出総量削減義務と排出量取引制度」

 目標達成の為に、様々なアプローチが必要である事は間違いないが、東京都では今年4月から「温室効果ガス排出総量削減義務と排出量取引制度」が施行され、一定規模以上の企業が排出する温室効果ガスに対しての「削減義務」を課している。(平成21年4月1日から施行、削減義務の開始は平成22年4月1日から)

対象事業所 対象となる施設 温室効果ガスの排出量が相当程度大きい事業所
※燃料、熱及び電気の使用量が、原油換算で年間1500キロリットル以上の事業所 削減
義務者 対象となる事業所の所有者(原則)
基準排出量 2002〜2007年度までの間のいずれか連続する3か年度の平均排出量から設定
※現行制度期間内に、削減対策の実施により総排出量を削減した事業所についてはその成果が反映されるよう2002−2004年度を選択することが可能
※3か年度のうちに、排出量が標準的でないと知事が特に認める年度がある場合については、その年度を除く2か年度とすることができる。
削減義務率
*1 オフィスビル、官公庁庁舎、商業施設、宿泊施設、教育施設、医療施設等
*2 事業所の全エネルギー使用量に占める地域冷暖房から供給されるエネルギーの割合が20%以上
*3 区分?-1、区分?-2以外の事業所(工場、上下水施設、廃棄物処理施設等)
区分 削減義務率
I-1 オフィスビル等(*1)と地域冷暖房施設
(区分I−2に該当するものを除く。)
8%
I-2 オフィスビル等(*1)のうち、地域冷暖房を多く利用している(*2)事業所 6%
II II 区分I−1、I−2以外の事業所(工場等(*3)) 6%

削減に向けた対策の推進の程度が特に優れた事業所については削減義務率を1/2又は3/4に軽減

 これらの義務履行には「自ら削減」と「他者の「削減量」の取得(排出量取引)」がある。「自ら削減」する場合、東京都では、電力量やガスの使用量など定量的な指標に基づく排出量により算定をしていることから、それらに係る効率の向上を図る設備投資や日々の業務改善などの努力が必要になってくる。

ICTを活用した、温暖化ガスの削減効果

 東京都の例では「電力量」や「ガス使用量」の削減量が評価の対象となっているが、日常業務において、ICTを活用する事により、人の移動を削減する事による環境負荷の低減や、サーバーをデータセンターに格納することで、電力利用効率を高めるなど様々な手段が考えられる。

 総務省の研究会の報告書よると、ICTの利活用によるCO2削減効果がある19の利活用シーンを想定した場合、2012年において、2005年比5.0%、1990年度比で5.4%の削減効果が出るとしている。

ICTの利活用によるCO2削減効果の評価分野と利用シーン
評価分野 利用シーン
個人向け電子商取引 オンラインショッピングオンラインショッピング
オンライン航空券発行
コンビニでのチケット購入
現金自動支払機の設置
法人向け電子商取引 オンライン取引
サプライチェーンマネジメント
リユース市場
物質の電子情報化 音楽系コンテンツ
映像系コンテンツ
パソコンソフト
新聞・書籍
人の移動 テレワーク
TV会議
遠隔管理
高度道路交通システム ITS
電子政府・電子自治体 電子入札
電子申請(税申請)
電子申請(オンラインレセプト)
エネルギー制御 BEMS・HRMS(*)

*HEMS: Home Energy Management System, BEMS: Building Energy Management System

 上表の様に様々なICTの利活用により、CO2減効果が得られることを示している。中には、パンデミック対策で活用が期待される、テレワークやTVが、会議なども含まれており、これを契機に普及されることも期待される。

国際標準化の動き

 総務省の研究会の試算でICTの利活用でCO2削減効果が見られることは理解出来るが、このCO2削減効果が果たして世界中で認められる効果であるか?一つの考え方としては、

  1. 試算の元となる単位(原単位)が世界的に同じ基準であるか?
  2. 原単位を利用して計算した、ICTの利活用によるCO2削減量は世界的に認められた内容か?

があると考える。1.は、日本においては(独)環境研究所が原単位を定めて公表している。国際的には、ISO14067として、製品のカーボンフットプリントの算定方法や表示方法について検討されており、2011年発行に向けて検討がされている。

 2.は、日本では、日本環境効率フォーラムから「情報通信技術(ICT)の環境効率評価ガイドライン(平成18年3月) 」に策定されている。国際的にはITU-Tが「ICTと気候変動」に関するフォーカスグループ(FG)を立ち上げ、2008年9月から2009年3月まで検討され、この分野で標準化が進んでいる日本は多くの寄書を行い、その活動に寄与した。
2009年5月。3月に終了したFGについて、継続的に検討する為のWorking Party(WP)の設立が了承、新たにWP3の設立された。このようにICTの利活用によるCO2削減効果が定量的に国際的に評価される素地は出来つつある。

 新政権が公約としている目標への達成や、東京都の様な自治体の動き、様々な活動が進むなか、ICTが具体的にどの様に貢献・評価されるのか?注視していきたい。

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