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Global Perspective 2012
2012年3月25日掲載

カタールQTelのモバイルペイメントへの取組み:外国人労働者を取り込めるか

グローバル研究グループ 佐藤 仁
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 2012年3月7日、中東カタールの通信事業者QTel、カタール・ナショナル銀行(QNB)、マスターカード、Oberthur Technologiesがカタールにおいて初のNFCを活用したモバイルペイメント導入に向けて提携することを発表した。

 Qtelの利用者はNFC対応のSIMカードまたはマスターカードPayPassのスティッカーを着装することでモバイルペイメントを利用することができるようになる。システム構築、アプリケーション開発はOberthur Technologiesが行う。

 無料で電話番号を変更することなくNFC対応のSIMカードに交換することが可能である。100QR(約27.47ドル)まではPIN入力やサインなしで、かざすだけで買い物が可能である。首都ドーハのモールにある映画館、ファーストフード、ショップなどでの利用を予定している。

国民の過半数以上を占める外国人労働者・大挙して進出するアメリカの大学

 日本ではサッカーでお馴染みのカタールだが、同国の人口は約140万。そのうち国籍を持つカタール人は約35万人(25%)で残りは外国人労働者である。天然ガス埋蔵量が世界2位でGDPが約1,265億ドルである。衛星テレビ局あるジャジーラの本社もカタールにある。

 近年ではアメリカの大学が多く進出をしており、コーネル大学カーネギーメロン大学ジョージタウン大学ノースウェスタン大学などがカタールにキャンパスを設置している。アメリカ最大のソフト・パワーは教育である。アメリカの大学が挙ってカタールにキャンパスを建設していることから、アメリカが政治経済関係や地政学の観点からもカタールを重視している姿勢が伺える。

 カタールのような小国において、同国の主要事業者が提携してサービス導入する今回のモバイルペイメントの普及は早いかもしれない。課題としては1人で2枚以上保有しているSIMカードの使い勝手と利便性を維持することができるか、ではないだろうか。店舗にPOSがあり、利用者が対応してSIMを保有していても利用しないのでは仕方がない。モバイルペイメント利用に向けた販売促進も重要になるだろう。

 さらには人口の約75%を占める海外からの出稼ぎ労働者の取り込みがモバイルペイメント普及の重要な鍵になるだろう。カタールでの外国人労働者については格差問題や就労条件など様々な問題も起きているが、カタールの消費活動において彼らの買い物・経済活動は決して無視できない。彼らも利用できる環境の整備も喫緊の課題であろう。そのためには彼らがQNBやマスターカードのアカウントを持てるようになるだけでなく政治や社会の面からも解決しなくてはならないことが多い。

携帯電話事情

 カタールの携帯電話事情を簡単に見ていきたい。

 携帯電話加入者は約380万人。携帯電話加入率は、約271%(2011年12月)
世界でも相当に加入率が高い国である。3Gの加入者は約87万、3G普及率約23%である。スマートフォンではBlackberryが人気ある。ほとんどの利用者が2Gでプリペイド方式を利用している。背景にはインド、パキスタン、イラン、フィリピンなどから大量の出稼ぎ労働者の存在が大きい。

 通信事業者QTelは世界17か国で事業展開を行っている。グループの2011年通期の決算は収入が16%増の87.3億ドル、EBITDAが18.7%増の40.6億ドルと増収増益である。ユーザー数はグループ全体で12.4%増の8,340万である。
携帯電話普及率が200%を超えているカタールにおいてはいずれ携帯電話市場の成長も頭打ちになってしまう。事業が好調で安定している時に、次の差別化に向けたサービスの導入に投資しておいた方が良いだろう。

(表1)カタールの通信事業者とシェア

  企業 シェア
1

Qatar Telecom (Qtel) 79%

2

Vodafone Qatar 21%

【参考動画】
QTelイメージ広告(2011年)  今回のモバイルペイメントとは関係ない

カタールでの外国人労働者の問題について伝える現地テレビ(2011年)

カタールにあるアメリカのジョージタウン大学紹介ビデオ(2011年)

*本情報は2012年3月17日時点のものである。

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