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Global Perspective 2012
2012年4月4日掲載

ニュージーランド:通信事業者によるモバイルペイメントへの取組み

グローバル研究グループ 佐藤 仁
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 2012年4月2日、ニュージーランドの通信事業者3社(Vodafone NZ、Telecom New Zealand、2degrees)と決済系システムベンダーのPaymarkがニュージーランドにおいてNFCを活用したモバイルペイメント導入に向けたジョイントベンチャー(JV)を設立することを発表した。具体的な商用開始時期、利用可能店舗、JVの持ち分比率、ビジネスモデルは明確にしていない。

 NFCモバイルペイメント導入に向けた通信事業者間でのJV設立に関するニュースは久しぶりである。2010年から2011年にかけて、世界の多くの国で通信事業者が連携してNFCを活用したモバイルペイメントを推進する動きが目立っていた。アメリカのISISに代表されるように、ドイツ、オランダ、デンマーク、ハンガリー、台湾、スウェーデンなど多くある。かつて筆者はそれらの現象を「NFCサービス普及のカギは“遠くの親戚より近くの他人”」と表したことがある。今回のニュージーランドもその事例の1つだろう。

 しかし、現時点(2012年4月)において商用サービスとしてローンチしている国は少ない。オランダではJV設立発表後に加盟していた通信事業者が離脱することもあった。各国ともに、JVに集う通信事業者の目的は共通だが、プロセスや各社のNFCモバイルペイメントに対する思惑と戦略的な位置付け、ビジネスモデルに対する考え方の相違があり、消費者がサービスを享受できるまでに至っていない。

 多くの国において、NFCモバイルペイメント導入に向けたJVでの活動はそこに参加する通信事業者、ベンダー、企業(金融機関など)がそれぞれ平等な立場で参加していることが多い。どこか特定の企業がイニシアティブをとってプロジェクトを主導していることは少ない。そのため、各社の事業に対するスタンスの違いや利害関係がプロジェクトに影響を与えていて、サービス開始実現に結びついていないことが多い。まさに「船頭多くして船山に登る」の状態である。ニュージーランドにおいてはそのようにならないことを期待している。

 ニュージーランドは携帯電話普及率が120%を超えている。通信事業者は新たなサービス提供による収入の確保が必要になってきている。ニュージーランドの通信事業者は現在、収支が増収増益である。キャッシュに余裕があるうちに、次を見据えたサービス展開をしておく必要があるだろう。
今回のモバイルペイメント導入に向けたJVが早期に形となり、同国においてモバイルペイメントが普及することと事業者にとっての新たな収益源となるか注目していきたい。

 またニュージーランドの人口は約420万であるが、観光客が年間約240万人訪れる。海外からの訪問客らもモバイルペイメントが利用できるように諸外国との連携も視野に入れたサービス設計が求められるのではないだろうか。

ニュージーランド携帯電話事情

 ニュージーランドの携帯電話事情を簡単に見ていきたい。

 携帯電話加入者は約532万人。携帯電話加入率は、約124%(2011年12月)
スマートフォンの人気が高い。3Gの普及率は51%

  企業 シェア
1 Vodafone NZ 45.4%
2 Telecom New Zealand 38.1%
3 2degrees 16.4%

(参考) 佐藤 仁 「通信事業者が取組むNFCを活用したモバイルペイメント:動向と課題」, InfoCom REVIEW 56号(2012年3月)pp13-pp26

*本情報は2012年4月4日時点のものである。

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