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2012年5月1日掲載 |
2012年4月19日、メキシコの通信事業者America Movil(Telcel)およびBanamex、Banco Inbursaの2銀行が提携してメキシコにおいてモバイルバンキングサービス「Transfer」を開始したことを発表した。 携帯電話で簡単に銀行口座を開設できる「Transfer」Telcelのユーザなら銀行口座を持っていなくてもSMS(ショートメッセージ)を送信して簡単にBanamexまたはBanco Inbursaの銀行口座を開設することができる。そしてSMSを送信するだけで預金、送金、支払、受け取り、引きおろし、残高確認、プリペイドのチャージができるようになった。SMSでのやり取りは24時間利用できる。既に2銀行の口座を持っているユーザも利用できる。お金の引きおろしには銀行の支店やATMなど必要な場所へ行かなくてはならない(Banamex銀行はメキシコ全土に1,662の支店、5,787のATM、4,200以上の代理店がある)。システムはGemalto社が構築し、同社のLinqUsというモバイルペイメントのプラットフォームが活用されている。 メキシコは人口が世界で11番目の約1億1,000万人いる。しかしメキシコで銀行口座を持っていない人は人口の70%近く(約7,000万人)存在している。携帯電話のSMS機能は現在、ほとんどすべての携帯電話で利用できる。メキシコの携帯電話加入者数は約9,360万(Telcelだけでも約6,500万)いる。ほとんどの人々が携帯電話は保有しているが、銀行口座は持っていないことから市場のニーズとポテンシャルは非常に高い。 グローバリゼーションにおける資本移動は新興国を変える新興国では銀行口座を持たなくとも送金ができる「モバイル送金サービス」は非常に有名であるが、今回のメキシコのように通信事業者TelcelのユーザがSMS送信だけで銀行口座も開設し、それに伴って預金・送金・受け取りなどの銀行が行っている「お金のやり取り」ができるようになったのは興味深い。 情報通信技術の発展によって1990年代後半からグローバリゼーションは大きく進展した。さらに情報通信技術の発達とともに資本移動がグローバルで行われるようになってきた。資本が移動することによって市場経済が発達する。新興国にも資本が移動することによって、市場としての魅力が生まれる。もちろん、それらの現象にはプラス面だけでなく、途上国にも投機マネーや資本が流れることによる格差問題や環境悪化といったマイナス面が生じていることも理解しなくてはならない。しかし多くの新興国ではメキシコのように国民の大半の人が銀行口座を持っておらず、「お金のやりとり」が簡単にできない人が多く、彼らは自国に投資される巨大資本の恩恵に与ることができないでいる。 携帯電話のSMSを送信するだけで簡単に銀行口座が開設できることによって貯金をするようになることは新興国の人々の生活や文化を変えることになるだろう。 Daniel Hajj Aboumrad氏(America MovilのCEO)は、今回のモバイルバンキングサービスをメキシコだけでなく、このようなサービスの潜在需要が非常に高いと想定される中南米(America Movilの事業展開国)へも拡大していきたいと述べている。 新興国のモバイルバンキングサービスは「情報通信」と「金融(資本移動)」というグローバリゼーションの象徴ともいうべき2つのファクターが統合されたサービスである。このようなサービスが新興国で多く登場することによって、今後の新興国における資本移動は市場経済をますます活性化し、経済成長につながっていく可能性がある。 メキシコ携帯電話事情メキシコの携帯電話事情を簡単に見ていきたい。 携帯電話加入者は約9,360万人。携帯電話加入率は、約87%(2011年12月)
America Movilの中南米での事業展開続いてメキシコではTelcelのブランドで提供しているAmerica Movilの中南米での事業展開をみていこう。アメリカにおいて展開しているヒスパニック系MVNOはアメリカ最大級のMVNOで有名である。また中南米で約2億4,600万の顧客がいる。携帯以外にも中南米において固定、ブロードバンド事業も行っているが売上の80%は携帯電話からの収入である。2012年第1四半期の決算では携帯の加入者は420万増、モバイルデータ通信は31%増加し増収増益を達成している。
(参考) 【参考動画】 *本情報は2012年4月27日現在のものである。 |
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