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2012年5月1日掲載 |
2012年4月22日、グーグルがイスラエルにおいて「ストリートビュー」を開設した。中東諸国では初めてとなる。「ストリートビュー」は2007年に開始されたサービスである。日本でも2009年にプライバシー侵害問題で有名になったので御存知の方も多いだろう。 日常生活が安全保障の対象であるイスラエルで導入に向けてインドでグーグルが「ストリートビュー」を開始した時も驚いた。それはインドの雑踏する街角を撮影できるのだろうか、精確に再現できるのだろうか、といった興味本位からくるものだった。 今回のイスラエルにおける「ストリートビュー」提供については別の意味で驚いた。イスラエルは中東の周辺諸国と対立関係もあり、バス等での無差別爆破テロなどのニュースをよく耳にする人も多いだろう。兵役が義務付けられているから町中や公共交通機関で銃を背負った若い兵士らをよく見かける。空港のセキュリティチェックも厳重で搭乗3時間前に空港に到着して徹底した荷物検査を受けることでも有名である。イスラエルでは日常生活が安全保障の対象であり国家にとっても最大のプライオリティである。そのイスラエルで「ストリートビュー」を導入できるのだろうか、と半信半疑であった。 歴史的にも国防意識は世界有数で、国内のあらゆる場所が厳重な体制にあるイスラエルで「ストリートビュー」を導入するというニュースを聞いたのは2011年8月だった。当局が撮影許可を出したという発表を行った。ガザ地区のイスラム過激派らはグーグルが提供している「Google Earth」の利用を公言していることはよく報じられている。発表時には、パレスチナ自治区ヨルダン川西岸のユダヤ人入植地などの撮影についてグーグルはコメントしていなかった。 1990年代後半から2000年代初頭にかけて情報技術の発達による軍事・戦争に大きな変化をもたらした。それは「軍事による革命(Revolution in Military Affairs:RMA)」と呼ばれている。情報通信技術は常に進化、発達している。グーグルの提供する「Google Earth」や「ストリートビュー」も軍事目的で活用されることが多い。かつては情報通信技術の中でもハイテク機器がRMAの中心であり、それらを入手し活用することができるのは国家や政府の軍隊であった。Google Earthやストリートビューの登場によって誰でもどこからでもアクセスし、精細な地図、位置情報が入手できるようになった。情報通信技術は一般の人々にとっても身近なものになった。2000年代後半からRMAは新たなフェーズに突入してきているのではないだろうか。 閑話休題。 イスラエルのデータ保護監視機関ILITAは2011年8月にグーグルに対して以下のことを要望した。
ストリートビューで聖地を楽しんでみよう2012年4月、テルアビブ、エルサレム、ハイファの3都市のストリートビューが開始された。当然、軍事などの重要施設や首相官邸近辺は撮影されていない。 【エルサレムのストリートビュー】 View Larger Map なお、イスラエルにおけるグーグルの取組として顕著なのは、2011年9月、イスラエル博物館とグーグルが協力し、古く繊細なため直射日光を当てることができない古代の写本「死海文書」を、オンラインで検索し読むことができるサービス「Digital Dead Sea Scroll」を公開したことだろう。イスラエル博物館のサイトで死海文書にアクセスし、文章を拡大したり、英訳を読むことができる。情報通信技術が成し遂げた歴史上画期的なサービスである。 今後もストリートビューをはじめとした情報通信技術は平和的に利用されることを期待してやまない。 (参考)「ストリートビュー」イスラエル 【参考動画】 イスラエルのストリートビュー(2012年) *本情報は2012年4月27日現在のものである。 |
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