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Global Perspective 2012
2012年5月24日掲載

Facebook:モバイル分野でのサービス拡大に向けた取組み

グローバル研究グループ 佐藤 仁
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2012年5月18日(米国時間)、Facebookが米NASDAQ市場に上場し、約161億ドルの調達を果たした。その後、上場3日目で公開価格の38ドルから約18%下落するなど話題は事欠かない。本稿ではその中でも注目の集まっているモバイルへの取組みについて最近の動向を見ていきたい。

重要となるモバイルでのマネタイズ

2012年5月、comScoreが発表した調査結果によると、アメリカでは、PCよりもモバイルからのFacebook利用時間が多い。(スマートフォンからの利用時間は平均441分で、PCからの利用は平均391分)
2012年3月時点で、全世界でFacebookをモバイルから利用しているユーザは約4億8,800万いる。(全ユーザ数は約9億)

Facebook自身、モバイルの重要性は理解しており、IPO申請の修正報告書のリスク要因(p5)において以下のように明記してある。

「モバイルでのマネタイズがうまくいかなければ、収益力にネガティブな影響をもたらす可能性がある」
(原文)Growth in use of Facebook through our mobile products, where our ability to monetize is unproven, as a substitute for use on personal computers may negatively affect our revenue and financial results.

開始したばかりのモバイルからの広告収入は少ない。同報告書(p91)において、世界のモバイル広告市場は2010年で15億ドルだったが、年率64%成長して2015年には176億ドルまで拡大するとの見通しである(IDC 2011年8月)、と述べている。今後、Facebookがモバイル広告の収入を確保していけるかがポイントになる。
一方で、PCと比較して画面が小さいモバイルでは広告にも限界がある。次節では、モバイル分野での広告以外の取組みについても紹介していきたい。

モバイル分野でのサービス拡大に向けた取組み

ここ数か月のモバイル分野でのサービス拡大や周辺事業、ユーザエクスペリエンス向上を目指して以下のような取組みを行っている。

(表1)最近のFacebookのモバイル分野での主な取組み
時期 概要

2012年2月

Webアプリ開発促進を目的としたW3Cビジネスグループ「Core Mobile Web Platform Community Group」の立ち上げ、およびWebアプリ内購入のキャリア決済機能への取り組みで世界のキャリアと協力することを発表。Webアプリ内購入のキャリア決済に対応するのは、KDDI、ソフトバンクモバイル、AT&T、T-Mobile USA、Verizon、ドイツテレコム、Orange、Telefonica、Vodafone。

2012年2月

モバイル端末のニュースフィードに表示できる広告「Sponsored Stories(日本での名称は「スポンサー記事」)」、ユーザのログアウト時に表示する「Premium Ads」、ページに表示するプロモーション「Offers」を発表した。これによってモバイルでの収益の確保を図った。

2012年5月

独自のアプリストア「App Center」を発表。ユーザはFacebook関連のWebアプリ、iOSおよびAndroid対応アプリをこのアプリストアで検索・ダウンロードできる。

2012年5月

モバイルでのニュースフィードの画像表示サイズを最大で従来の3倍にすることを発表し、順次実行している。これによってユーザエクスペリエンス向上を目指している。

(公表資料を元に筆者作成)

さらにFacebookは、モバイル分野の強化を目指して以下のような提携・買収を行っている。今後ますますモバイルでの事業拡大と収益確保は注目される。

(表2)最近のFacebookのモバイル事業強化に向けた主な提携・買収
時期 会社 概要
2012年4月 Instagram 写真共有サービスを運営する米Instagramを10億ドルで買収すると発表。Instagramは世界で会員3000万人以上を抱える人気サービス。
2012年4月 Tagtile モバイルベースのクーポンおよびショップカードサービスを提供する米Tagtileを買収。
2012年5月 Glancee 位置情報利用のモバイルソーシャルアプリを提供する米Glanceeを買収。
2012年5月 Lightbox モバイル写真共有アプリを提供する英Lightboxのチームを獲得。
2012年5月 Karma モバイルソーシャルギフトサービスを提供する米Karmaを買収。
(公表資料を元に筆者作成)

マーク・ザッカーバーグCEO自身、5月11日に投資家対象にFacebookの成長戦略を説明した際、2012年の最優先事項として、モバイルへのシフトと広告事業を挙げた。

広告も含めたモバイルでのサービス展開はこれから「ドル箱」に化ける可能性も秘めているし、「爆弾」となりうるかもしれない。モバイルのマネタイズに向けた取組みについては引き続き注視する必要がある。
Facebookは上場後の株価下落がメディアを賑せているが、長い目で見ていきたい。

【参考動画】Facebookのモバイルでの状況に関する動画(ロイター 2012年)

*本情報は2012年5月23日時点のものである。

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