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Global Perspective 2012
2012年10月3日掲載

UAE、サウジアラビア:スマートフォン普及の影に潜む外国人出稼ぎ労働者

グローバル研究グループ 佐藤 仁
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2012年5月にGoogleが発表した2012年Q1時点での世界主要国におけるスマートフォン調査がある。その中で、中東のUAEとサウジアラビアを注目してみたい。

Google調査に見るUAE、サウジアラビアのスマートフォンの主要動向

UAE、サウジアラビアでのスマートフォンの主要な動向を調査結果から見てみよう。

(図1)UAE、サウジアラビアでのスマートフォン主要動向
(図1)UAE、サウジアラビアでのスマートフォン主要動向
(Google社 Our Mobile Planet:UAE, Saudi Arabia May 2012を元に筆者作成)

上記の数字だけを見ると、中東の2ヶ国は日本よりもスマートフォン普及率は高く、積極的に利用されているように見受ける。(日本は同調査では普及率20%)

UAE、サウジアラビアでスマートフォンはどこまで普及しているのか

ここで、UAEとサウジアラビアでの調査対象者に注目してみたい。両国ともに18歳から64歳まで500人を対象に調査を行っている。下記がそれぞれの国の調査対象者の統計内訳である。
見ての通り、大学以上の学校を卒業し、都市に住み、正規雇用者で平均よりも高い収入を得ている既婚者であることが伺える。(中東の場合、ルーラルは砂漠のため、ほとんどが都市に在住している)
この条件に該当するのは、多くはUAE、サウジアラビア国籍の在来の現地人だろう。

(図2)UAE、サウジアラビアでのスマートフォン利用動向調査対象
(図2)UAE、サウジアラビアでのスマートフォン利用動向調査対象
(図2)UAE、サウジアラビアでのスマートフォン利用動向調査対象
(Google社 Our Mobile Planet:UAE, Saudi Arabia May 2012を元に筆者作成)

中東諸国の経済を支えている外国人出稼ぎ労働者

UAE、サウジアラビアだけでなく中東諸国の経済を支えているのは海外からの出稼ぎ労働者である。サウジアラビアでは人口約2,500万人のうち外国人労働者が約670万人で、約4人に1人が外国人労働者である。UAEでは人口約460万人のうち、在来のアラブ人国民は全体の20%程度で、ほとんどが外国人労働者である。

中東諸国に行くとわかるが、フィリピン、パキスタン、インド、バングラディッシュ、ネパール、スリランカ、タイ、インドネシア、イラン、エジプト、近隣中東およびアフリカ諸国などからの多数の出稼ぎ労働者が働いており、彼らが中東諸国の経済を下支えしていると言っても過言ではない。
彼らの多くは今でも中古のフィーチャーフォンをプリペイドで利用していることがほとんどである。最新のiPhoneやAndroid OSの端末はまだ高嶺の花である。ハイエンドで高級なスマートフォン端末よりも母国への送金が優先である。

一方で、2007年頃に販売された初期のiPhoneなどが中古品として市場に出回り始めている。出稼ぎ労働者の間では、そのような安価な中古スマートフォン端末は人気がある。但し、スマートフォンの通信費は決して安くはないので、中古でスマートフォン端末を入手しても、アプリや動画を楽しむことは限られている。またプリペイドSIMを利用していることから積極的にデータ通信は行わないことが多い。

UAE、サウジアラビアでスマートフォンの普及率が非常に高く見受ける。確かに、現地人の間でのスマートフォンの人気と普及のスピードは目覚ましい。以前はNokia端末が大人気で、その後BlackBerryが隆盛を極めていたが、最近では専らiPhoneやAndroid OS端末に人気が集中している。しかし、両国で誰もがスマートフォンを頻繁に利用している訳ではない。
多くの海外からの出稼ぎ労働者によって、中東の経済と生活が成り立っていることを忘れてはならない。

【参考動画】
UAEを中心とした中東地域でBlackBerryを利用して現地人女性らがソーシャルメディアにアクセスしてモバイルコマースを楽しんでいる。

【参考動画】
一方、UAEで起きている外国人出稼ぎ労働者の問題。

*本情報は2012年10月1日時点のものである。

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