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Global Perspective 2012
2012年10月12日掲載

エチオピア:急成長の携帯電話市場と現地生産を行う中華系メーカー

グローバル研究グループ 佐藤 仁
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8,280万人の人口を抱えているが、まだ携帯電話普及率が約20%のエチオピアの近況を見ていこう。

エチオピアの携帯電話事業者は、エチオピア国営で独占企業のエチオピアテレコム(ETC)のみである。2010年12月にフランステレコムとeTOM関連で提携を行った(関連レポート)。当時はまだ携帯電話普及率が10%未満だった。

エチオピアで携帯電話を製造する中華系メーカー

エチオピアは現在でも携帯電話普及率は20%程度である。これからますます多くの人が携帯電話を利用していくようになるだろう。
 そのエチオピア市場に目をつけて積極的に進出しているのが中華系メーカーである。彼らはエチオピアでの携帯電話の製造を開始している。市場に近いところで製造し、すぐにマーケットに流通させることができる。更にエチオピアでの雇用創出にもつながっている。

(1)香港「Tecno」
香港の携帯電話メーカー「Tecno」は2006年7月に香港で設立された携帯電話メーカーで2008年からアフリカをメインターゲットとしており、エチオピア以外でもナイジェリア、ケニア、ガーナなどで事業展開しており、アフリカ市場において、ローエンドからハイエンドまでの端末を供給しており、アフリカではよく見かけるブランドになっている。

同社は、2012年夏にエチオピアで携帯電話の現地での生産を開始した。今後、同社では約400ドルのAndroid OS搭載のスマートフォン「Tecno T3」というハイエンド端末をエチオピアで製造し市場へ投入する予定である。平均月収が約23ドルで、国民の大半が1日1ドル以下で生活をしているエチオピアでは相当に高い端末である。

【参考動画】エチオピアでのTecno Mobileの活動(2012年)

(2)中国「SMADL」
2007年5月に中国の深センで設立された携帯電話メーカー「SMADL」もエチオピアで携帯電話製造を行っている。同社も2008年からアフリカ市場に注力しており、ケニア、モロッコに支店を持っている。

【参考動画】エチオピアでのSMADL社の広告

現地の言葉に対応した携帯電話

現在エチオピアで流通している携帯電話の大半は周辺諸国からの中古端末である。Nokiaの中古端末が人気はあるが、他の新興国よりも携帯電話市場の発達が出遅れたため、Nokiaブランドが他国と比較するとそれ程は強くない。
  周辺諸国から中古携帯電話はエチオピアの公用語のアムハラ語には対応していない。エチオピアでは就学率が高くないため、全国民が英語や周辺諸国のアラビア語を理解できる訳ではない。今後、地方への更なる携帯電話普及を考えると現地語に対応していない携帯電話には限界がある。
 現地に進出しているメーカーでは、アムハラ語以外に他に現地のオロモ語、ティグリニャ語にも対応した端末を投入している。これは現地での普及にとっては大きなメリットである。
 そして、エチオピアに進出し現地で生産しているメーカーにとっては、現地の人達が携わることによってアムハラ語に対応したソフトウェアの確認、試験を現地人が行うことができる。開発や設計は中国など他国で行われていても、現地の言語は日常利用している人でないと伝わらないニュアンスや使い方がある。

エチオピア携帯電話事情

人口8,280万人で携帯電話加入者数が1,840万(普及率約21%)である。普及率こそまだ20%程度だが、その成長の勢いは物凄く、毎月約80〜100万の加入者増加である。新興国だけでなく、海外ではプリペイド方式が主流のため、1人が複数枚のSIMカードを保有していることから、普及率が100%を超えることが多い。つまり、1人が複数の携帯電話会社のSIMカードを保有しているのだが、現在、エチオピアでは独占のETC1社のため、ETCのSIMカードだけを複数枚保有している人はそれほど多くない。

(表1)エチオピア携帯電話加入者数と普及率推移(2012.7)

(表1)エチオピア携帯電話加入者数と普及率推移(2012.7)
(公表数値を元に筆者作成)

エチオピアでは、携帯電話市場の更なる成長が期待される。中華系の携帯電話メーカーが現地で積極的な事業展開を行い、競争も行われ、各社のブランドも確立しつつある。今後は通信事業者の競争が求められるようになるだろう。
アフリカの様々な国では携帯電話の普及とともに、ただの電話とテキストメッセージの利用だけでなくモバイル送金や農業分野等で活用されている。携帯電話の普及がエチオピアの社会にどのような変化と影響をもたらしていくのか、注視していきたい。

【参考動画】
エチオピアでTana Communicationが携帯電話製造しているニュース(2012年)

*本情報は2012年10月9日時点の情報である。

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