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Global Perspective 2012
2012年10月25日掲載

レバノン:デモ、軍との衝突、道路炎上、危険地帯などを知らせるアプリ「Ma2too3a」

グローバル研究グループ 佐藤 仁
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2012年10月19日、レバノンの首都ベイルートで、自動車爆弾による爆発があり、レバノンの情報機関の高官ハッサン氏を含め、少なくとも8人が死亡、80人余りが負傷した事件があった。その後もデモ隊と治安部隊が彼方此方で衝突を起こしたり、ハッサン氏の葬儀に数千人規模の群集が集まっていると報じられている。日本でも多く報じられているのでご存知の方も多いだろう。

レバノンでのデモ、事故、車両通行止めを知らせるアプリ「Ma2too3a」

そのレバノンで開発された「Ma2too3a」というスマートフォン向けアプリの人気が高い。アプリ調査AppAnnieのレバノンでのiPhoneアプリ全体の中でゲームやソーシャルメディアを抑えての1位である(2012年10月20日時点)。 このアプリは無料で、現在はiPhone、Android OS向けに提供されている。

レバノン国内でのデモや爆発があった場所、車が燃えている場所、軍と衝突しているところ、危険地帯等がストリート上に表示される。利用者は、その場所で何が起こっているのか情報をアップし、それがアプリの地図上に反映される仕組みである。誰でも情報をアップすることが可能である。ストリートはGoogleマップを活用しており、詳細なストリートまでわかる。このアプリを活用して外出する際にはそのストリートを避けて通ることができる。

デモ、軍との衝突、爆発、道路の炎上、事故、危険地帯などを示す物騒なアイコンが表示されている(図1)。また、新しい情報がアップされるとスマートフォンに通知される。ベイルート市で多くの事故やデモが発生していたことがわかる。 

(図1)「Ma2too3a」アプリで確認されたレバノンとベイルートの状況
(2012年10月20日時点)
左からレバノン全体、ベイルート全体、街の中心部
(図1)「Ma2too3a」アプリで確認されたレバノンとベイルートの状況(2012年10月20日時点)左からレバノン全体、ベイルート全体、街の中心部
(出所:Ma2too3aより)

デジタルデバイドが命の分かれ道にならないことを祈願

2012年10月19日(爆破テロ当日)にあまりにも多くの炎上、危険地帯などのアイコンがベイルート市にマークされていたことから、「Ma2too3a」のFacebookページでは” Beirut tonight. Hope you and your loved ones are safe!” (今夜のベイルート市だよ。皆さんと愛する人たちが安全であることを祈っています)とコメントしている。
 多くの人がニュースを見たり、近くでデモや事故が発生している時、「Ma2too3a」に情報をアップしているのだろう。それらの情報を見て、外出を避けたり、別の迂回ルートを探すことができるだろうが、このようなアプリがなくても安心して安全な生活できる社会がレバノンに来ることを望んでいる。

世界ではまだこのようなアプリを必要としている国がある。レバノンの携帯電話普及率は約90%、スマートフォンの普及は約40%である。アプリを利用できる人だけが危険を回避できるのではなく、アプリを利用できない人でも危険を回避できるような仕組みが行政やメディアによって提供されることを期待している。デジタルデバイドが命の分かれ道になってはいけない。レバノンに早く平和が訪れることを祈願する。

【参考動画】
ベイルート(レバノン)の爆破現場(2012年)

(参考)

*本情報は2012年10月21日時点のものである。

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