2015年1月20日掲載 ITトレンド全般 Global Perspective

米英サイバー防衛で連携:アメリカを中心として増加することが予想される「サイバー防衛同盟」

オバマ米大統領とキャメロン英首相は2015年1月16日、ホワイトハウスで首脳会談後に記者会見し、暴力的な過激主義の脅威に対抗するため米英の共同作業グループを新たに設置し、両国内での対策を協議していくと発表した。そして両首脳はサイバー防衛での協力においても連携強化で合意したことを発表した(※1)。



米英サイバー防衛協力


2015年1月にオバマ米大統領とキャメロン英首相の会談で合意された両国でのサイバー防衛は大きく以下の3点である。


(1)重要インフラのサイバーセキュリティ強化

(Improving Critical Infrastructure Cybersecurity)


 米英両国では重要インフラへのサイバー攻撃に関する情報交換を行っていくこと、両国でサイバー攻撃に対する訓練を行っていくことを確認した。両国では、まず金融部門へのサイバー攻撃に対する対策と訓練の強化を行っていく予定である。さらに両国では重要インフラ産業界にサイバーセキュリティおよび対策でのベストプラクティスと標準化の連携と推進を行っていくことで合意した。


(2)サイバー防衛での連携強化

(Strengthening Cooperation on Cyber Defense)


 米英両国ではUS-CERTとCERT-UKでのサイバーセキュリティにおける連携の確認を行った。サイバー攻撃の脅威、サイバー攻撃発生時の対応やネットワーク管理について情報交換やサイバー防衛での協力を行っていく。

また、イギリスのGovernment Communications Headquarters (英国政府通信本部GCHQ) と Security Service (英国機密諜報部:MI5)とアメリカのNational Security Agency(米国家安全保障局:NSA)とFederal Bureau of Investigation(米連邦捜査局:FBI)がサイバーセキュリティの分野において、それぞれの国で活動しながら協力し情報交換をしていくことで一致した。


(3)サイバーセキュリティ分野での学術研究および人材育成支援


(Supporting Academic Research on Cybersecurity Issues)


 サイバーセキュリティ分野における学術的研究と人材育成が両国にとって最重要な課題であることで合意した。まず英米両国政府はサイバーセキュリティの学術研究への支援を行っていく。サイバーセキュリティ分野での人材育成に関して6か月間の奨学金支援も行い、2016年から開始する予定である。さらにアメリカのマサチューセッツ工科大学(MIT)の「Computer Science and Artificial Intelligence Laboratory(コンピュータ科学・人工知能研究所)」はイギリスのケンブリッジ大学を招待して「Cambridge vs. Cambridgeサイバーセキュリティコンテスト」を実施する。



これからもアメリカを中心として増加するだろうサイバー防衛同盟


国際関係における脅威の形態は時代とともに変化している。現代社会においてサイバー攻撃は国家にとって脅威の1つである。それは現代社会がサイバースペースに依拠しており、その脆弱性を突いた攻撃がサイバー攻撃であり、そのサイバースペースは軍や政府機関のみならず、民間の重要インフラにまで及ぶからである。


サイバースペースの防衛において重要なのが、情報である。つまり「脆弱性に関する情報」を検知したら、それを共有することによって、早急にサイバースペースの改修を行い、敵からのサイバー攻撃の防衛を行うことができる。サイバースペースは人工的空間で、そこを構築するのも、攻撃するのも人である。人材育成が重要になる。


国際政治学者の山本吉宣はアメリカを中心とする帝国システムの同盟について以下のように述べている(※2)。

 冷戦が終焉したあとでも、アメリカを中心とする帝国システムにおいては、中心圏の同盟は生き続ける。(中略)単一帝国システムにおいては、同盟は、帝国にとって帝国システム全体の管理網の一部であり、帝国の国益やシステム全体の利益を守るために動員されるものである。これに対して、同盟国にとって同盟は多くの場合、狭い意味での地域的な国益・安全保障を守るための手段である。


これからもアメリカとイギリスのように、2国間または多国間でのサイバー防衛の連携は増加していくだろう。現在のサイバースペースにおけるパワーはアメリカの一極集中である。つまり、アメリカを中心としたサイバー防衛の同盟がこれからも形成されることが想定される。そしてサイバー防衛の同盟は、アメリカ中心であるためアメリカのサイバーパワーがますます強化されていく。


同盟国(今回はイギリス)は、アメリカと連携することによって情報共有や人材育成の恩恵を受けることができるようになり、自国のサイバーススペース防衛にとって有益となるだろう。またアメリカのサイバーパワーの一極集中は、敵対する国や組織に対しての抑止力にもなるだろう。


【参考動画】


*本情報は2015年1月19日時点のものである。

※1 White House(2015) 16th Jan 2015, “FACT SHEET: U.S.-United Kingdom Cybersecurity Cooperation”
http://www.whitehouse.gov/the-press-office/2015/01/16/fact-sheet-us-united-kingdom-cybersecurity-cooperation

※2 山本吉宣『「帝国」の国際政治学:冷戦後の国際システムとアメリカ』(東信道 2006年)p246

会員限定レポートの閲覧や、InfoComニューズレターの最新のレポート等を受け取れます。

ICR|株式会社情報通信総合研究所 情報通信総合研究所は情報通信のシンクタンクです。
ページの先頭へ戻る
FOLLOW US
FacebookTwitterRSS