2015年3月30日掲載 ITトレンド全般 Global Perspective

サイバー戦争における攻撃の重要性

米軍サイバー司令部トップを兼務する国家安全保障局(NSA)のロジャーズ局長は2015年3月19日、上院軍事委員会の公聴会でサイバー攻撃抑止には防衛態勢の整備だけでは限界があることから、サイバー攻撃能力を強化すべきだとの考えを表明した(※1)。


ロジャーズ氏は、サイバー司令部が2010年の創設以降、主にサイバー防衛能力向上に重点を置いてきたとしたが、「従来の受け身の戦略ではいずれ遅きに失し、リソース(コスト、人材)も膨大になる」(“in the end, a purely defensive, reactive strategy will be both late to need and in­cred­ibly resource-intense.”)と指摘した。


ロジャーズ局長はサイバー攻撃能力の向上こそが抑止力に繋がることを強調した。(“We’re at a tipping point, we need to think about: How do we increase our capacity on the offensive side to get to that point of deterrence? We’ve got to increase our decision-makers’ comfort and level of knowledge with what capabilities we have and what we can do,”)


サイバー攻撃において重要なのは防衛よりも攻撃である。現代社会は国家のあらゆるシステム、経済、社会、個人の生活がサイバースペースに依拠している。サイバースペース無しには個人の生活も国家運営も行えない。安全保障に関わる軍事システムもサイバースペースに大きく依拠している。


サイバー攻撃とはサイバースペースの脆弱性を突いて攻撃を仕掛けてくるものである。そしてその脆弱性は相手にサイバー攻撃をすることによって検知することができる。そして自国のサイバースペースにも同じ脆弱性がある可能性が高い。サイバースペースの脆弱性を早急に検知して、敵国に侵入を仕掛けると同時に、自国のサイバースペースの防衛も可能になる。敵からその脆弱性を突いて攻撃を仕掛けられる前に、その脆弱性を修復することができる。すなわちサイバースペースにおいては「攻撃が最大の防御」なのだ。サイバースペースはただ防衛だけをしていても脆弱性を検知するのは後手になってしまい、検知した時には既に敵から侵入を受けている可能性も高い。


NSAとしては、サイバー攻撃能力を強化することによって抑止力につなげたい考えがあるようだが、サイバースペースで攻撃力をどれだけ強化しても、敵からのサイバー攻撃を抑止するとは限らない。サイバー攻撃力が強化されても、敵からのサイバー攻撃とその脅威は低減しないだろう。そこは核兵器や通常兵器とは異なる。
2013年にスノーデンがNSAのサイバー攻撃を暴露した。ロジャーズ局長がサイバー攻撃力強化によって抑止力を働かせようとする発言の意図は、むしろアメリカのサイバー攻撃を正当化しようとするのが狙いなのだろう。


【参考動画】


*本情報は2015年3月26日時点のものである。

※1 Washington Post(2015), 19th Mar 2015, “Cyber chief: Efforts to deter attacks against the U.S. are not working”
http://www.washingtonpost.com/world/national-security/head-of-cyber-command-us-may-need-to-boost-offensive-cyber-powers/2015/03/19/1ad79a34-ce4e-11e4-a2a7-9517a3a70506_story.html

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