アメリカと韓国、サイバーセキュリティで協力:ホットライン設置で北朝鮮からのサイバー攻撃を抑止 | InfoComニューズレター
2015年10月22日掲載 ITトレンド全般 Global Perspective

アメリカと韓国、サイバーセキュリティで協力:ホットライン設置で北朝鮮からのサイバー攻撃を抑止


ソウルの地下鉄

2015年10月、韓国のパク大統領はアメリカを訪問し、アメリカのオバマ大統領と会談を行った。TPPや北朝鮮の核問題などについて議論がなされたが、会談の中でサイバーセキュリティ分野における協力も議論された(※1)。

 米韓ともに北朝鮮からのサイバー攻撃に対する脅威

今回、アメリカと韓国がサイバーセキュリティ分野で協力していくことの背景としては、言うまでもなく北朝鮮からのサイバー攻撃に対して両国で協力して対峙していこうというものがある。リリースの中にも「北朝鮮からのサイバー攻撃の増加による脅威(the increasing cyber threats to both our nations, including from the DPRK)」と北朝鮮を名指しで危険視している。

 アメリカは2014年末から2015年にかけてソニー・ピクチャーズへ北朝鮮からのサイバー攻撃を受けているとして、制裁措置を出すなどに出たことは記憶に新しい(参考レポート)。

 また韓国は常に北朝鮮からのサイバー攻撃の脅威に晒されている。2015年10月には韓国ソウルの地下鉄が北朝鮮からのサイバー攻撃を昨年から受けていいたことが明らかになった(※2)。

報道によると、ソウルの地下鉄1~4号線を運営するソウルメトロの業務用パソコンを管理するサーバーが北朝鮮の偵察総局と推定される組織にハッキングされていたそうだ。韓国の国家情報院は、このサイバー攻撃が2013年3月の韓国の主要放送局や銀行に対するサイバー攻撃と同じ手法で、同じ組織(北朝鮮の偵察総局)による犯行と推定されると報告した。不正プログラムに感染したパソコンには総合管制所と電力供給部署のパソコンが含まれており、大規模なテロ事件につながる恐れもあったと指摘される。ソウルメトロでは2013年に18万4,578件、2014年には37万713件、2015年も9月までに既に35万188件のサイバー攻撃を受けているとのことだ。韓国の首都の交通インフラへのサイバー攻撃によるシステム停止や電車の破壊などが行われた場合は安全保障にも影響しかねない。

 米韓での「サイバーホットライン」設置と北朝鮮への抑止

また今回の米韓首脳会談において、両国間でサイバーセキュリティの「ホットライン」を設置することを明らかにした。アメリカはロシア、中国ともサイバーセキュリティに関する「ホットライン」を設置している。ロシアと中国とのホットラインは、相互主義的安全保障のコンテクストで設置されている。つまり中国もロシアもアメリカとは対立関係にあり、サイバー攻撃による「誤解や思い込みによる衝突を回避するため」の相互の協力のための「ホットライン」である。すなわち「どちらかからのサイバー攻撃があったとしても、自分たちは攻撃していない」ということをすぐに確認し、エスカレーションし、事象を明確にするためのホットラインといえる。

一方で、アメリカと韓国は同盟国同士であるから、両国間で国家が関わるサイバー攻撃が行われることは考えにくい。韓国とアメリカのサイバーセキュリティにおけるホットラインは、両国の共通の敵である北朝鮮からのサイバー攻撃に対するものである。北朝鮮からの大規模サイバー攻撃があった場合に、両国で情報交換や防衛に関する協力をしていくための連絡手段としてのホットラインである。

それだけ両国にとって北朝鮮からのサイバー攻撃が両国の経済および安全保障上の脅威になっていることの証であろう。また、アメリカと韓国がサイバーセキュリティ分野で協力を表明し、両国間でホットラインを設置して、両国のサイバースペースを防衛していく意思を示したことは、北朝鮮からのサイバー攻撃に対する抑止にもつながるであろう。

とはいえ、国際社会がサイバースペースに依拠せざるを得なくなった現在、サイバースペースの脆弱性を突いた攻撃は社会や安全保障に影響を与えることが可能となった。米韓がサイバーセキュリティで協力関係を表明したくらいで北朝鮮からの執拗なサイバー攻撃が低減することは考えにくい。サイバースペースの防衛はこれからも引き続き重要であり、これはアメリカと韓国だけの問題ではなく、日本としても重要な課題である。


 【参考動画】



(参考)

*本情報は2015年10月20日時点のものである。

(※1) WhiteHouse(2015) 16th Oct 2015, “Remarks by President Obama and President Park of the Republic of Korea in Joint Press Conference”
https://www.whitehouse.gov/the-press-office/2015/10/16/remarks-president-obama-and-president-park-republic-korea-joint-press

(サイバーに関する個所の抜粋。下線は筆者)
For example, given the increasing cyber threats to both our nations, including from the DPRK, we’re stepping up our efforts to strengthen our cyber defenses and coordinating at the highest levels -- the White House and the Blue House -- making sure that we’re in sync in dealing with that challenge.

 Today’s meeting was particularly meaningful in that it provides impetus to efforts to open new frontiers of cooperation within the Korea-U.S. alliance and strengthens our global partnership.  Korea and the United States will focus first on health security, cybersecurity, space and Arctic cooperation, which are gaining the spotlight in this 21st century. 

 In the realm of space, particularly, we will work to quickly conclude talks on the Korea-U.S. agreement on space cooperation to establish an institutional foundation for such cooperation.  In the cyber world too, in order to enhance common response capabilities against cyber-attacks, we’ve agreed to establish a hotline between the White House and the Blue House for cyber cooperation.

(※2) 朝鮮日報(2015年10月5日)「ソウル地下鉄のパソコン 北朝鮮が昨年ハッキングか」http://www.chosunonline.com/site/data/html_dir/2015/10/05/2015100501744.html

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