2016年4月20日掲載 ITトレンド全般 Global Perspective

アメリカ軍、ISへサイバー攻撃:かく乱や制裁を目的としてサイバースペースを攻撃する段階へ



2016年2月29日、カーター国防長官はIS(イスラム国)へサイバー攻撃を仕掛けていることによって、ISのサイバースペースを混乱させて能力低下を図っていることを記者会見で明らかにした[1]。

 アメリカはパネッタ国防長官[2]、リン国防副長官[3]もサイバー攻撃を受けた場合は、自衛権に基づいて武力による反撃も辞さないと明言していた。これは、サイバー攻撃を受けた際には、武力行使に出るというアピールで、サイバー攻撃からの防衛に対する抑止を目的とした武力攻撃へのエスカレーションである。しかし、今回は自らサイバー攻撃を行っていることを宣言して、ISのサイバー能力を混乱させていることを明らかにした。スノーデン以外で、公式にかつアメリカの国防長官がサイバー攻撃をアメリカが自ら行っていることを宣言したことの意義は大きい。そしてカーター国防長官自身、今回のサイバー攻撃はアメリカ軍にとってもサイバースペースでの初の攻撃であり、非常に重要であることを明らかにした[4]。

アメリカは2010年にイスラエルと共同でイランの核施設へサイバー攻撃を行ったと報じられているが、これもアメリカは公式には自らが関わったとは認めていない。

 サイバー優位国から劣位国・組織への攻撃

世界中で国家が関与していると思われるサイバー攻撃を分析すると、国家間でのサイバー攻撃は、サイバー能力に差がある場合に、ほぼ限られている。アメリカのようなサイバー優位国の行動として相手国や今回のようなISという組織へのサイバー攻撃を考えてみると、サイバー能力が高いため侵入能力と、物理的破壊力もあり、かく乱や制裁が多い。またStuxnetのように優位国から劣位国に対する伝統的な安全保障に関わる施設へのサイバー攻撃もある。アメリカのような覇権国からすれば、インフォーマルな制裁行動としてサイバー攻撃は有用になると考えられていた。但し、もはやサイバースペースへの攻撃を明言していることから、サイバースペースへの攻撃はもはやインフォーマルな攻撃ではなく、陸・海・空からの攻撃と同等になっている。

サイバースペースは不均衡、非対称の世界である。一定の均衡がある有力国の間では、通常の戦争につながる可能性が高いからサイバースペースでも同じように相互の抑止が働く。不均衡な関係では安全保障においては、技術優位国が有利になる。サイバー戦争はプログラミング戦争である。どれだけの技術力と優秀な人材を抱えているかがサイバー戦争では重要になり、現在のサイバースペースではアメリカが圧倒的に優位である。アメリカは今回のISへのサイバー攻撃の効果を見て、これからもサイバースペースのかく乱や制裁を目的としてサイバー攻撃を仕掛けてくる可能性は高い。さらに他国もアメリカのサイバースペースへの攻撃に追随してくる可能性も高い。

[1] U.S.Department of Defense, (2016),” Department of Defense Press Briefing by Secretary Carter and Gen. Dunford in the Pentagon Briefing Room”

http://www.defense.gov/News/News-Transcripts/Transcript-View/Article/682341/department-of-defense-press-briefing-by-secretary-carter-and-gen-dunford-in-the

(原文)We're also using cyber tools to disrupt ISIL's ability to operate and communicate over the virtual battlefield.

[2] U.S.Department of Defense, ” Panetta Spells Out DOD Roles in Cyberdefense,” October 11,2012 available at http://www.defense.gov/news/newsarticle.aspx?id=118187 (last visit 1 January, 2016) パネッタ国防長官については、以下のように述べている。(原文、下線は筆者)[DOD] has developed the capability to conduct effective operations to counter threats to our national interests in cyberspace,"“If we detect an imminent threat of attack that will cause significant physical destruction or kill American citizens, we need to have the option to take action to defend the nation when directed by the President,

[3] U.S.Department of Defense,” DOD Announces First Strategy for Operating in Cyberspace,” July 14, 2012 available at http://www.defense.gov/releases/release.aspx?releaseid=14651 (last visit 1 January, 2016)

リン国防副長官については、以下のように述べている。(原文、下線は筆者)“Our success in cyberspace depends on a robust public/private partnership. The defense of the military will matter little unless our civilian critical infrastructure is also able to withstand attacks.”

[4] So this is something that's new in this war, not something you would've seen back in the Gulf War, but it's an important new capability and it is an important use of our Cyber Command and the reason that Cyber Command was established in the first place.

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