2017年6月26日掲載 ITトレンド全般 Global Perspective

サイバー反撃よりも重要な国家としてのリアルな反撃力


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「自衛隊にサイバー反撃能力」という記事が2017年6月20日の時事ドットコムに出ていた。自衛隊が敵のシステムに対してサイバー攻撃で反撃できるようにすると自民党が提言しているものだ。短い記事なので下記に引用しておく[1]。

自衛隊にサイバー反撃能力=自民が中間報告

自民党は2017年6月20日、安全保障調査会(会長・今津寛衆院議員)などの合同会議を党本部で開き、次期中期防衛力整備計画(2019~23年度)に向けた中間報告を取りまとめた。サイバー攻撃への対処力を強化するため、敵のサイバー拠点を反撃する能力の保有を自衛隊に認めるよう提言。新迎撃ミサイルの導入なども求めた。

  中間報告は「サイバー空間上の脅威は深刻さを増し、わが国に対するサイバー攻撃は高度化・巧妙化の一途をたどっている」と指摘。サイバー空間の監視・防護体制を強化するとともに、「自衛隊がサイバー攻撃能力を備える必要がある」と明記した。

 原子力発電所など重要インフラを目標としたサイバー攻撃に対する反撃を可能にするもので、自衛権の行使による対応を視野に入れている。ただ、憲法9条との関係上、自衛権でどこまで対応できるかについては、今後の検討課題だ。(時事ドットコム 2017年6月20日、下線筆者)

サイバー防衛にとっても重要なサイバー攻撃

記事によると、サイバー攻撃を受けた時に、対抗してサイバー攻撃で反撃をするようだが、サイバー攻撃はいざという時に攻撃をしかけようとしてもそう簡単にはいかない。平時から敵のシステムの脆弱性を探り、常に侵入を繰り返すサイバー攻撃を行っていかないと、いざという時にだけサイバー攻撃で反撃することはできない。

 またサイバー防衛も、平時からサイバー攻撃を行っている方が圧倒的に強い。それは攻撃を繰り返していくうちに、敵のシステムの脆弱性を常にチェックしているので、自分側の方は大丈夫かといった確認を行いながらサイバー防衛にも活かすことができる。

つまりサイバー攻撃を受けた時に、サイバー攻撃で反撃をするのであれば、他国のように平時から敵のシステムにサイバー攻撃を継続的に行っていく必要がある。そうしないと、反撃時に敵国のどの施設を標的として、そこに対して「どのようなサイバー攻撃をしかけて」、それによって「どのようなダメージを相手側に被らすのか」、「そのダメージが日本が受けたサイバー攻撃と同等なのか」といった試算もできないだろう。また、いざという時になってサイバー反撃をしようとしても、既に敵国はサイバー防衛を強化していて、サイバー反撃の効果はないだろう。

 重要インフラや国家の重要施設などがサイバー攻撃を受けた時の報復は、サイバー攻撃で反撃するよりも経済制裁やリアルな攻撃の方が現実的だ。他国も日本のサイバー攻撃に脅威を感じている国はほとんどないだろう。むしろ現在の国際社会にとっては、日本が本気になって経済制裁やリアルな反撃をしてくる方が脅威だ。

[1] 時事ドットコム (2017年6月20日)「自衛隊にサイバー反撃能力=自民が中間報告」
http://www.jiji.com/jc/article?k=2017062001026&g=pol

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