2015年8月11日掲載 ICT経済 ICTエコノミーの今

携帯電話料金の国際比較からみる国際レポート把握の重要性


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通信サービス料金の国際比較の難しさ

7月28日に総務省から「電気通信サービスに係る内外価格差に関する調査」(以下、総務省調査)が公表された。この調査は毎年公表されており、日本の通信サービスの料金水準を海外諸国のそれと比べて、高いのか或いは低いのかを報告している。今回の調査では、携帯電話、ブロードバンド、固定電話の通信サービスの料金水準について、東京(日本)、ニューヨーク(米国)、ロンドン(英国)、パリ(仏国)、デュッセルドルフ(独国)、ストックホルム(瑞典)、ソウル(韓国)の7都市が比較されている。

対象となっている通信サービスの中でも、多くの人が利用している携帯電話の料金水準に対する関心は高いと思う。調査では、フィーチャーフォンとスマートフォンそれぞれのユーザー料金比較がなされている。また、スマートフォンユーザーについては、データ使用量別(2GB、5GB、7GB)に、それぞれ比較が行われている(図表1)。

結果を確認すると、フィーチャーフォンユーザーの東京の料金水準は主要7都市のうち、ストックホルムに次いで2番目に安い。日本は国際的にみてもかなり低廉な料金でフィーチャーフォンによる通話が利用できるといえる。

続いて、スマートフォンユーザーについては、データ使用量が2GBで主要7都市中4番目に安く、5GB及び7GBでは、5番目に安い状況である。大まかにみると、ストックホルム、ソウル、パリが低廉な料金グループにあり、ニューヨークとデュッセルドルフが高い料金グループにあり、東京とロンドンは中程度の料金グループにある。

日本の携帯電話料金の国際比較結果

(図表1)日本の携帯電話料金の国際比較結果
(出典:総務省「電気通信サービスに係る内外価格差調査」より作成)

但し、これらの結果は、目安として捉える必要がある。ここには、通信料金の国際比較の難しさがある。国際比較を困難にしている主な要因は次の通りである。

  1. 通信料金はユーザーの利用実態により変化すること
  2. 通信事業者の料金プランが複雑であること
  3. 各国通貨で表記される料金比較の問題

1については、料金比較の際、各国間で通信サービスの利用量を合わせて比較する必要があるのだが、それをどこに設定するかが問題となる。例えば、前述の総務省調査の場合には、スマートフォンユーザーについて、音声通話が月に36分、メールが月に129通、データ通信が月に2GBをAパターンとして利用量を設定している。加えて、日本のユーザーは、データ通信をもっと多く使用している人も多いことから、データ通信を月に5GB使用する場合をBパターン、月に7GB使用する場合をCパターンとして、データ使用量で場合分けを行い比較している。

この設定方針は、音声とメールについては、日本の平均的な利用量をもとに設定しており、データ使用量についは、場合分けで対応している。そして、どの国でもある程度日本と同様の使われ方をしていると想定して、日本の平均的な利用量で比較していると考えられる。しかし、通信サービスは、日本のようにモバイルブロードバンドが普及している国もあればそうではない国もあり、その支払方法については、ポストペイド主流の国もあればプリペイドが主流の国もあるように、それぞれの国で異なっている。そのため、比較対象国間で適切に比較できる利用量を設けることは相当に困難であると言える。

2については、各国の複数の通信事業者が複数の料金・割引プランを作り提供しているので、どの通信事業者のどの料金・割引プランを用いて比較するべきかが問題になる。これについては、例えば、最もシェアが大きい通信事業者の最も低廉な料金となるプランを用いるといった形で一定のルールを作って比較することが一般的である。また、割引をどこまで反映するかが問題となる。多くの通信事業者は、スマートフォン端末と通信サービスをセットで販売することで割引を実施したり、料金プラン以外でもキャンペーンによる割引を実施したりしている。割引についても、一定のルールに基づいて各国で揃えて比較を行う必要があるのだが、割引の方法は様々で完全に横並びで比較するには限界があり、これが通信料金の国際比較を困難にしている。

3については、通信サービスだけに関わる問題ではなく、価格・料金の国際比較を行う際には、全ての財・サービスについて関係することである。国際比較可能な金額にするために、購買力平価や為替レートが用いられ、各国の通貨単位はその時々の基準通貨(円やドル)に変換されて比較がなされる。購買力平価も為替も各国の経済情勢によって、その時々に変化するので、たとえ、各国の通信サービス料金に変化がなくても、比較の時点によって結果は変わる。例えば、日本であれば、為替レートが円安に振れれば、日本の通信料金は他国と比べて割安となる。そのため、価格・料金の国際比較結果は、購買力平価や為替レートの水準にも気を付けてみる必要がある。

国際レポートにおける日本の位置づけの確認

上記のような通信サービス料金の国際比較の困難性が存在する中、世界では日本の通信サービス料金はどのように評価されているのだろうか。日本の通信サービスがより低廉な価格で利用できることが示されていれば、世界における日本のICTの進展度合いに関するプレゼンスは高まることから、国内向けに発信される通信料金の国際比較調査とは別の意味合いで重要性が高いのだが、なかなか目に触れる機会はない。

通信サービス料金の国際比較が行われている代表的な調査には、OECDが実施している調査とITUが実施している調査がある。OECDの調査は、「Communications Outlook」において隔年で公表されてきた。今年は、「Communication Outlook」は廃止され、内容を引き継いだ「Digital Economy Outlook」において7月15日に公表された。この中で携帯電話料金の比較が行われている(図表2)。

この結果をみると、「100 calls + 2 GB mobile basket」では、日本は、OECD加盟の34カ国中、ハンガリー、米国に次いで、3番目に料金が高いことが示されている。前述の総務省調査における比較対象国の主要7カ国について、OECD調査を概観すると、米国、日本、ドイツは通信料金の高いグループ、スウェーデン、韓国、フランス、英国が通信料金の低いグループに位置している。このように、調査によって通信料金の高低の結果が異なるのは、前述したとおり、通信サービス料金の国際比較の困難さが引き起こしている。

OECD調査における携帯電話料金の国際比較

(図表2)OECD調査における携帯電話料金の国際比較
(出典:OECD「Digital Economy Outlook 2015」)

OECDの調査において、日本の通信料金が高く示されているのは、料金プラン選択が適していないことが要因である。OECDの調査では、通信サービス使用量を100 callsの通話・メッセージ、2 GBのデータ使用量を基準に比較している。ここで、日本において選択されている料金プランを確認すると、通話、データ共に使用量が無制限のプランが選択されている。本来は、通話・メッセージが100callsとデータ使用量が2GBを超えるより近い使用量を提供するプランが選択されるべきであり、通話・データ使用量が無制限のプランと比較した場合、日本の料金が高く見えてしまうのは当然の結果といえる。

世界の国際機関が公表する各種の国際比較調査では、(たとえ、調査結果が実態を示していなくても、)世界における日本の位置づけが、世界に発信されることから、調査内容を注視していく必要がある。世界における日本のICT進展度合いに関するプレゼンスの向上のためには、日本の通信サービスがより低廉な価格で利用ができることを発信していかなくてはいけない。実態に即していない調査結果が示されていた場合には、その是正を求めるように発信していくべきである。

通信サービス料金の国際比較調査で、もう一つの代表的な調査結果が記載されているITUの「Measuring the Information Society Report」が年末頃に公表される予定である。このレポートでは、ICT開発指標(ICT Development Index)と合せて、ICT価格バスケット(ICT Price Basket)が公表される。これらの指標についても注目していきたい。

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