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情報通信 ニュースの正鵠
2008年2月掲載

グーグルの次の一手は風船通信?

グローバル研究グループ 清水 憲人

  わずか10年ほど前に設立されたグーグルは、検索連動型広告というビジネス・モデルでオンライン広告市場を席巻し、2007年には売上高約166億ドル(1兆7,800億円)、株式時価総額約1,600億ドル(17兆1,200億円)という大企業に成長した。

 成長したグーグルは、ビジネスとしてはまったく稼ぎに繋がっていなかった動画共有サイトのYouTubeを16.5億ドル(1,800億円)で買収して世間をあっと言わせたり、文書作成ソフトをオンライン上で無料提供(Google Docs)してマイクロソフトを不安にさせたりするなど、さまざまな分野で新しい試みを行っている。今月初めにマイクロソフトが米ヤフーに買収を提案して大きく報道されたが、最大の狙いはグーグルへの対抗であった。このニュースは、グーグルという企業の存在感がインターネット業界でいかに大きくなってきているのかを、改めて印象付けるものとなった。

 グーグルは通信分野でもいろいろと手がけている。2005年には電力線通信事業者カレント・コミュニケーションズに出資、2006年にはマウンテンデューにおいて無料のWi-Fiサービスを提供、2007年には携帯電話用の基本ソフト「アンドロイド」の提供計画を発表、そして現在は無線周波数免許のオークションに参加中である。

 そんなグーグルが今度は「風船通信」を提供するスペース・データという会社に関心を示していると、2月20日付けのウォールストリートジャーナルは報じている。スペース・データ社は、水素ガスを注入したゴム製の風船に通信装置を載せて飛ばし、無線基地局機能の代わりを提供する会社。

 1つの風船で基地局40基分をカバーできるので、格安で通信サービスを提供できるというのがコンセプト。ただし、ものが風船だけに成層圏の彼方へ飛んでいくと破裂してしまう。そこで日々の風船の打ち上げを酪農家に頼んだり、パラシュートで地上に落下した通信装置を回収するもの好きな人たちを雇っているらしい。

 このビジネス・モデルがうまくいくのかどうかは不明であり、実際にグーグルが同社を買収したり提携を行ったりするのかどうかも現段階では判らない(同記事は「情報筋」の話として伝えているだけ)。ただ、このような記事が出て来て、一定の注目を集めること自体が、グーグルのビジネスへの取り組み方を端的に現しているような気がする。

 バナー広告が中心だったインターネット広告市場を、10年でさま変わりさせたグーグルだけに、もしかしたら「10年後の通信インフラの主役は風船」なんてことがあるかもしれない。

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