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情報通信 ニュースの正鵠
2008年2月掲載

ひと目でわかる米国主要通信事業者の2007年度業績

グローバル研究グループ 清水 憲人

 2月28日にスプリント・ネクステルが業績を発表したことで、米国主要通信事業者の2007年度業績が出揃った。2007年の業界動向を振り返る意味で、各社の成績を簡単に紹介しておきたい。下表では、2006年と2007年の各社の業績評価を、お天気マークで現してみた。これは厳密な基準に基づくものではなく、筆者の主観評価である。

う図表

 次に各社の2007年度業績について簡単にコメントしておこう。

1.AT&T

 売上と利益が大幅増になった最大の要因は、2006年12月に固定電話業界3位のベルサウスを買収し、携帯電話の合弁会社シンギュラーを連結子会社化したこと。M&A効果以外では、携帯電話の純増数でトップになったことが大きい。2006年までは業界2位のベライゾンに純増数で負けていたが、iPhoneを発売した2007年第2四半期以降逆転。企業向け通信市場でも引続き強みを発揮している。IPTVサービスが立ち上がり始めたのも吉報。

2.ベライゾン

 固定通信の減収を携帯電話の増収で補い増収・増益。引続き「堅調」と言ってよいが、携帯電話事業では以前ほどの勢いがない。AT&Tより1年ほど早くサービス開始したTVサービス「FiOS TV」の加入数は100万加入を超えた。

3.スプリント・ネクステル

 米国携帯電話業界で一人負け状態。2007年第4四半期に加入数が60万以上純減したことを発表した際には、株価が一気に25%も値下がりした。プリペイド契約の増加により通年ではわずかに加入数を伸ばしたが、売上は減少。2005年にネクステルを買収した際の営業権、約300億ドルについて減損処理費用を計上したことで赤字に転落。12月にはCEOが交代した。

4.クウェスト

 2007年第4四半期に、2001年以来となる配当を実施。テレコム・バブル崩壊後の危機的状況を脱し経営は正常化。しかし、依然として成長戦略は描けず、コスト削減での利益捻出を繰返している。

5.コムキャスト

 本業のTVサービスに加え、ブロードバンドや電話サービスがいずれも増収になり、2006年に続き業績は好調。しかし、AT&TやベライゾンのTVサービスが本格的に立ち上がり始めたことを受けて、今後の競争力についての懸念が増大。株価は値下がり傾向にあり、1月には大手機関投資家がCEOの辞任などを要求する一幕もあった。

6.ディレクTV

 国内の加入数増や南米のスカイ・ブラジル統合などにより増収となったが、利益率は悪化。電話・インターネット・TVをパッケージングした「トリプルプレイ」の競争が進展する中で、単独での生き残りを疑問視する声が以前から聞かれる。

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