2月26日にグーグルは、日米間海底ケーブルネットワーク建設のコンソーシアムに参加することを発表した(他に、KDDI、シングテルなどが参加)。
「新規参入事業者や異業種プレイヤーによる海底ケーブル建設」というニュースは、古くから通信業界に携わる者に、ある悪夢を連想させる。「テレコム・バブル」である。
「インターネット時代には通信トラヒックが爆発的に成長するため、回線容量はいくらあっても足りない」という、いわゆる「インターネット神話」に基づき、1990年代後半に数多くの新規参入事業者が、光ファイバーによる大容量バックボーン回線を世界中に張り巡らせた。その結果、基幹網の通信回線は供給が実需要を大幅に上回ることとなり、ワールドコム、グローバル・クロッシングなどの大手を含め、多くの事業者が経営破たんした。
あれから約7年。グーグルが参加する日米海底ケーブル以外にも、複数のプロジェクトが進行中であり、ちょっとした海底ケーブル建設ラッシュになっている。
さて、今回の建設ラッシュと1990年代のテレコム・バブルはどこが違うのだろうか?
まず、トラヒック成長に対する認識が違う。バブル期には「インターネット・トラヒックは100日ごとに倍増する(すなわち1年で約10倍になる)」というフレーズが、裏づけもないままに各所で引用されたが、現在ではせいぜい「1〜2年で倍増」程度であることが判ってきた。
次に、ルートが違う。90年代の海底ケーブル計画の多くは、欧州と米国を結ぶ大西洋横断ケーブルであったが、現在進行中のプロジェクトはアジア、中東、アフリカなどの新興地域と欧米をつなぐものが中心だ。
また、通信インフラの重要性に対する認識にも変化がみられる。2006年の台湾沖地震や今年1月に中東で発生した海底ケーブル切断事故などにより、広い地域の通信が長時間不通となる事例が生じ、複数ルートでの通信回線確保の重要性が改めて認識された。
このように、テレコム・バブル期の建設ラッシュと現在の海底ケーブル建設にはいくつかの違いを指摘することができる。
しかしながら、個々のプレイヤーがそれぞれの判断で投資を行う以上、供給の総量が妥当な水準であり続ける保証はない。通信業界は、バブルの教訓を活かして新たな成長時代を迎えることができるのか、それとも歴史は繰返すのか。その答えが出るのは数年先だ。