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情報通信 ニュースの正鵠
2008年3月掲載

銅が値上がりするとブロードバンドが速くなる

グローバル研究グループ 清水 憲人

 ITU(国際電気通信連合)のレポートでは最近、「世界で最もブロードバンドの安い国」として毎年のように日本が紹介されている。国際比較で日本の料金が安くなっている理由はいくつかあるが、最も大きな要因は伝送速度だろう。

 日本ではユーザ宅まで光ファイバーを敷設するFTTH(Fiber to the home)が広く採用され、一般住宅向けに下り最大100Mbpsのブロードバンド・サービスが提供されている。しかし、そのような事例は世界ではまだ少数であり、旧来の電話回線上でDSL(Digital Subscriber Line)技術を利用するブロードバンドが主流だ。伝送速度は下り最大数Mbpsという地域が多い。

 ITUは「100kbpsあたりの月額料金」で比べているため、伝送速度が速ければ分母が大きくなり料金は安くなるというわけだ。

 ほんの1〜2年前まで、欧米の通信業界関係者と話をすると、「日本では一般家庭向けに光ファイバーを引いて100Mbpsのサービスを提供しているそうだが、一体何に使っているんだ?」と半ば呆れ顔で質問されることが多かった。

 しかし最近少し風向きが変わってきた。米国ではベライゾンが提供するFTTHインターネット接続サービスの加入数が150万を超え、また欧州でもアクセス回線の光化計画(アクセス回線の途中までの光化を含む)が相次いで発表されている。

 YouTubeなどの動画サイトを始めとした、いわゆるリッチコンテンツが人気を獲得するなかで、「回線は速い方が快適」という当たり前の事実を、多くのエンドユーザが実感として感じ始めたということだろう。

 また、銅の値上がりが光化の追い風になっているという指摘もある。小麦など食料品の原材料とは異なり、日々の生活の中で金属の値上がりは実感しづらいが、銅価格は過去5年間で約4倍になっている。

 電話線は銅で出来ており、銅の値段が上がれば当然コストが高くなる。以前は「銅線と比べて割高」であり「コストに見合う需要がない」と考えられがちであったFTTHなどの光ファイバー回線も、銅線の値上がりによって相対的に値ごろ感がでてきた。今では、新規ネットワーク建設地域については光ファイバーで設備構築するという事業者が多い。

 銅価格がさらに値上がりすれば、世界各地で通信ネットワークの光化計画が進み、ブロードバンドが一層高速化するきっかけになるかもしれない。

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