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情報通信 ニュースの正鵠
2008年4月掲載

ブロードバンド大国

グローバル研究グループ 清水 憲人

 総務省が4月3日に公表したデータによると、2007年末時点で日本のブロードバンド回線数は2,829万。その内FTTH(光ファイバー)は1,133万で全体の40%になった。DSL契約数は1,313万であり、依然としてDSLの方が多いのだが、こちらは2006年3月の1,452万をピークに減少している。このままのペースでいけば今年の9月にはFTTHの数がDSLを逆転するだろう。

 こんな国は世界を見渡しても日本だけだ。FTTHの普及という観点からすれば、日本は間違いなく世界に冠たる『ブロードバンド大国』である。

 米国でもつい最近FCC(連邦通信委員会)が、2007年6月時点のブロードバンド統計を発表したが、固定ブロードバンド回線6,436万のうち、FTTHは140万回線。全体の約2%に過ぎなかった。欧州のFTTHは今年の1月時点の統計で、EU27カ国全部足しても130万回線程度だ。

 世界の固定ブロードバンドの主役は依然としてDSLやケーブル・モデムであり、海外の通信業界関係者に「日本ではFTTHの数がDSLを追い越しそうだ」と話しても、感心されるよりもむしろ怪訝な顔をされる。

 驚くべきは、普及率の高さだけではない。日本のFTTHの多くが主に「高速ブロードバンド回線」として利用されているという事実もまた、海外の業界関係者を唖然とさせる。

 海外におけるFTTH展開を需要面で牽引しているのは映像サービスである。例えば米国のベライゾン社の場合、2007年末時点でFTTHインターネット150万加入に対して、TVサービスが94万加入であった。つまりFTTH契約者の約6割がTVサービスに加入しているのだ 。ベライゾン自身も、「インターネット、テレビ、電話の『トリプルプレイ』サービスの顧客獲得が期待できる地域を中心にFTTHを展開している」と語っている。

 それはある意味当然のことだ。FTTHをインターネットやIP電話の回線として使うだけでは、従来のビジネスとのカニバリゼーションによるマイナスが生じるため、純粋な増収にはなりにくい。これまで提供していない新たなサービスで顧客を獲得できなければ、多額の投資を回収することは難しい。

 ブロードバンド競争の延長線上で広く普及してきたFTTHという大容量インフラ。これをいかに活用していくのか。『ブロードバンド大国』の真価が問われるのはこれからだ。

【略語】
FTTH:Fiber to the Home
DSL:Digital Subscriber Line

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