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情報通信 ニュースの正鵠
2008年5月掲載

デジタル化とエンターテイメント

グローバル研究グループ 清水 憲人

 5月になったので、バラ園に行って来た。このような場所では最近、「来園者のほぼ全員がカメラマン」状態である。本格的な機材 を持ち込んだプロの写真家らしき人達もいるが、私を含めた大多数はコンパクト・デジカメや携帯電話のカメラを手にした素人カメラマンだ。

 近年さまざまなメディアがデジタル化されているが、カメラはデジタル化の恩恵を大きく受けた商品の一つであろう。撮影して直 ぐに画像イメージを確認でき、気に入らなければ削除できるという気軽さは、写真撮影のハードルを大きく下げた。また写真屋さんに現像を頼まなくても、パソコンとプリンタがあれば自宅で簡単にプリントアウトできることも写真を身近なものにした。

 デジタル化とは直接関係ないかもしれないが、カメラ自身の性能の向上も見逃せない。最近のデジカメは安価な機種でもさまざまなモードに対応しており、至近距離での接写も簡単にできる。また手ブレ防止機能が付いていれば片手で適当に操作してもそれなりの写真になる。携帯電話に搭載されたことで、カメラは携行品の一つになり、有名人を見かければパチリ、キレイな風景があればパチリと、写真を撮る機会も圧倒的に増えた。

写真:至近距離で適当に撮影したバラの写真 写真:割と珍しい緑色のバラ
至近距離で適当に撮影したバラの写真 割と珍しい緑色のバラ

 かつて、旅行や記念日など、ハレの日の記憶を残しておくための装置であったカメラは、デジタル化によって日々の生活の中に完全に溶け込み、写真は身近なエンターテイメントになったと言えるであろう。

 翻って放送のデジタル化である。

 本当は「高精細映像を自宅で簡単に楽しめる」とか「双方向機能を組み合わせてこれまでのTVとは異なる経験ができる」といったメリットがあるはずなのだが、これまでのところ目立つのはネガティブな情報が多い。「従来のTVでは見られなくなる」とか「ダビングに制限がかかる」など、不便になる話ばかりが先行してしまっている。放送のデジタル化にはもちろん「電波の有効利用」という重要な意味があるのだが、消費者にとっての具体的なメリットが見えてこない。

 人々の生活にもっとも身近なエンターテイメントであるTVの楽しみ方が、デジタル化によって新たなステージに進化するのはいつのことだろうか。

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