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情報通信 ニュースの正鵠
2009年8月掲載

経験共有装置としてのTwitter

[tweet]

 大人になってからPCやインターネットを利用するようになった「デジタルイミグラント」世代にとって、インターネット特有のサービスを理解することは難しい。

 eメールは「郵便」、チャットは「おしゃべり」、ブログは「日記」。現実世界の活動に例えることで理解できるものもあるが、しっくりこないものもある。

 「つぶやき」に例えられる「Twitter」などは、しっくりこないサービスの代表例であろう。

 「ブログに書くほどかっちりした内容ではないことをちょっとつぶやくツール」などと説明されても、何のことだかよくわからない。誰かに連絡したいのならメールがあるし、不特定多数向けに情報発信したいのならブログがあるじゃないか。旧世代の多くはそう考えるだろう。

 Twitterというサービスがわかりにくい理由の一つは、リアル・ワールドに置き換えてイメージすることが難しいからだ。Twitterでつぶやいている人を、無理やり現実世界で例えるならば「特定の誰かに話しかけるでもなく、そうかといって独り言ほど控えめでもなく、一人で何かをしゃべり続ける人」といったところか?

 まだ流行り始めて間もないサービスなので、これからどのような使われ方が主流になっていくのかは、よくわからないが、現時点での利用方法を見ていると、つぶやきの内容は他愛のないものが多い。「腹が減った」とか、「眠い」とか、「これからどこどこに行ってきます」とか...米国の調査会社pearanalyticsによれば、同社が調査した2,000件のつぶやきのうち約4割(811件)は「いまサンドウィッチを食べているところ」などの、「深い意味のないつぶやき(pointless babble)」であったという。

 デジタルイミグラント世代にしてみると、そんなことをいちいちつぶやく意味がわからないし、それを他人が見て喜ぶ心理もわからない。「こんなサービス誰が使うんだろう」と考える人が多いのではないだろうか。私もそう思っていた一人である。

 しかし最近になってTwitterの記事がメディアを賑わす機会が増えてきた:

「マスメディアの報道が規制されているイランにおいて情報収集・交換ツールとして活躍している」

「朝日新聞が日本の大手メディア企業として最初にTwitterで情報配信を開始した」

「フォードやペプシコなどの一部の企業は、広報活動の一環としてTwitterのつぶやきをモニターしている」

「ホワイトハウスがオバマ大統領の記者会見の予定をTwitterで発表した」

「勝間和代さんがTwitterを利用し始めるやいなや猛烈な勢いで使いこなしている」

「広瀬香美さんがテーマソングを作った」

などなど。

 利用者数も2009年に入ってから急速に増加し、一般の人達の間での認知度もかなり高まってきた。

 そこで、Twitterというサービスが一体どのように使われているのか、勝間さんの例を少し拝見させて頂こう。

 勝間さんのTwitterアカウントをみると、8月18日夜時点で既に1,958回もつぶやいている。Twitterの利用を本格的に開始したのが7月半ば頃らしいので、1日平均60回ほどつぶやいている計算になる。噂通りのヘビーTwitterだ。

 内容はというと、「TV番組の収録中です」とか「小飼弾さんの家で花火見てます」とか「夕食こんなの食べてます」とか「メールの未読が3桁あります」など。時おり写真を交えながらのコメントは、つぶやきというよりは、生活の実況中継と表現した方がイメージしやすいかもしれない。ちなみに勝間さんのTwitterアカウントをフォローしている人は現時点で約2万4,000人。何かをつぶやくたびに2万4,000人のTwitterアカウントにそれが表示されるのだ。「花火を見に行った時に小飼弾さんがユニークなTシャツを着ていた」話とか「自転車で移動していて大雨に降られて困った」話など。勝間さんのファン「カツマ―」達は、通常では知り得ないパーソナルな経験をPCや携帯端末を通じて共有することができるのである。いわば「セミリアルタイムの経験共有装置」といったところか。

 一方、勝間さんにとって、Twitterを利用するメリットは何だろう?

 勝間さん自身がコラムの中で書かれているのは「情報収集力のアップ」である。Twitterの使い方やiPhoneの設定などが判らないとつぶやけば、ITに詳しい多くの人から即座にアドバイスが寄せられてくる。また原稿執筆などの孤独な作業をしている時には、「Twitterで皆とつながっている感覚」は励みになるだろう。さらに、イベントや新刊本などの紹介をすれば、つぶやきを眺めている人達の多くが参加や購入を検討するだろう。いわば、ネットを通じて、ブレインや応援団を引き連れながら生活しているようなものだ。

 なるほどな〜と思う。

 すべての人が同じような使い方をする(あるいはできる)とは思わないし、Twitterが今後も成長していくのかどうかもわからない。しかし、それは別として、ネットを通じたソーシャル・メディアの典型的なかたちがここに示されているような気がする。

(参考リンク)

ちなみに、弊社(情報通信総合研究所)のTwitterはこちらです。


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