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情報通信 ニュースの正鵠
2010年7月7日掲載

ネット動画がテレビのキラーコンテンツになる日

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 米国では、今年の3月末時点で、通信事業者が提供するIPTVサービスの加入者数が500万を超えた(ベライゾンのFiOS TVが303万、AT&TのU-verse TVが230万※)。

 500万という数は、世帯普及率に直すとまだ5%にも達していないし、ライバルであるケーブルTVの6,000万加入とくらべても1割に満たない。しかし、IPTVの提供エリアが全米をカバーしているわけではないことを考慮すると、なかなかの数字といえる(ベライゾンの場合、FiOS TVの提供可能世帯数は1,200万件であり、303万加入は、その25%に相当する)。

 IPTVサービスが伸びた理由は一つではない。ケーブルTVと較べて視聴できる番組数に比して料金が割安。高精細(HD)番組のチャンネル・ラインアップの充実に力を入れた。ユーザ・インターフェースが洗練されていて使いやすい。最新のDVR(デジタル・ビデオ・レコーダー)がセットになっている。そもそもケーブルTVのサービスに不満を抱いているユーザが多い。など、いろいろ考えられる。

 さまざまなセールスポイントがあるIPTVだが、最近目立つのはネット・コンテンツとの連携である。

 ベライゾンは昨年7月以降、SNSのFacebookやTwitter、動画サイトのVeohなどにテレビからアクセスできるようにしていたが、今年の4月にはさらにYouTubeの動画視聴を可能にしたと発表した。

 「テレビ番組を録画して無断でアップロードした『違法コピー動画』を削除してしまえば、後は観るべきものはない」と揶揄されたのは昔の話。今や動画共有サイトの投稿コンテンツは、テレビ番組とは違った楽しみをユーザに提供している。

 例えば、4月に発売され大ヒットしたiPadの関連でも、「iPadを操作するネコ」、「広島弁の紹介ビデオ」、「iPadマジシャン」など、複数の動画が話題を呼んだ。

「iPadを操作するネコiggy」

「広島弁のiPad紹介ビデオ」

「iPadマジシャン」

 2005年12月にYouTubeがサービス提供を始めてから4年半。かつて佐々木俊尚さんが「ネタ視聴」という言葉で表現した、動画の新たな鑑賞方法は、すっかり市民権を得たと言うことができるだろう。

 ネット動画が、「配信プラットフォーム」としてだけでなく、「コンテンツの供給元」としての価値も創出しつつあるということになれば、それをテレビからも観ることができるようにしたいと考えるのは当然だ。

 そのトレンドをさらに推し進めることになりそうなのが、5月20日に発表された「グーグルTV」。

グーグルTVのコンセプトは、「エンターテイメント・ハブ」の提供。ユーザが観たいコンテンツを検索すれば、それが、テレビ放送であろうと、録画番組であろうと、ネット動画であろうと、すぐに探し出してきて、簡単にテレビで観られるようにすることを目指している。

 実際の製品が出てこないと、それが本当にスムースに実現できるのかどうかは分らないが、コンセプトは魅力的だ。

 「ネット動画が映らないテレビは売れない」

 ありとあらゆる動画を検索してテレビで簡単に視聴することが可能な時代になれば、そうなったとしても不思議はない。

※厳密に言うと、ベライゾンのFiOS TVは、テレビ放送についてはケーブルTVと同じRF方式を採用し、双方向機能のみIP方式


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