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情報通信 ニュースの正鵠
2011年12月6日掲載

「走る情報端末」、それがクルマの未来型?

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 先週末に開幕した東京モーターショー。土日の2日間だけで、24万人以上が訪れ、大盛況となっている(2009年に開催された前回イベントでは、13日間で約61万人)。

 来場者が増えた理由としては、前回参加を見送った海外メーカーが多数出展していることが大きいが、国内メーカーの展示だけを見ても前回とはムードが違う。

前回の東京モーターショーが開催された2009年は、鳩山首相(当時)が国連で「温室効果ガスの排出量を1990年比で25%削減する」と宣言し、グリーンICTが大きな脚光を浴びた年であった。

 CO2削減の機運が高まる中で、ガソリンを燃焼させて走るクルマは「温暖化の元凶」のように考えられ、モーターショーの展示も電気自動車(EV)、プラグインハイブリッドカー(PHV)、そして燃費向上への取り組みばかりに注目が集まった。

 その結果、従来のクルマ好きには面白くないイベントとなり、一方で、新しいユーザ層にアピールするほどの未来像を提供しきれていなかった。多くの一般消費者にとって、クルマを動かす動力源が電気なのかハイブリッドなのか燃料電池なのかという話は、それほど大きな関心を呼ぶものではない。

 ところが今回は様子が違う。走りにこだわるEVや、街乗り用のコミューターなど、新たな利用シーンを提案するコンセプトカーが数多く展示されている。

 見どころ満載の今回のモーターショーだが、その中でも、とりわけ強烈なインパクトを放っているのが車体全面をディスプレイで覆ったトヨタの「Fun-vii」だ。豊田社長が「スマートフォンにタイヤを4つつけたようなクルマ」と表現したように、従来のクルマのイメージに囚われない斬新なモノになっている。

トヨタのFun-vii
トヨタのFun-vii

 会場で流されているデモ映像では、朝起きた時にその日の気分で車体の色を変更したり、スマートフォンで撮影した花の写真の模様を車体に映したりしていた。ケータイの背景写真を取り替えるのと同じような気軽さでデザインを変更できるというわけだ。また、クルマの内部もフル・ディスプレイになっていて、さまざまな情報をウィンドウに表示してくれる。さらに自動走行レーンでは、クルマに運転を任せることも可能になる。

Fun-viiのデモ映像はこちら。

 まるでSF映画のようだが、特筆すべきことは、このデモに出てくる技術のほとんどは「夢の技術」ではないということだ。

 街の情報を風景に重ねて表示させる「AR(Augmented Reality)技術」も、クルマに運転を任せる「自動走行」も、駐車場の床に設置した装置でEVに無線で充電する「ワイヤレス給電」も、すべて、現在の技術の延長線上で実現可能なものばかりだ。

 つまり絵空事ではなく「ニーズがあれば、こうしたクルマは可能ですよ」という提案になっているのだ。(コスト面や法規制面でクリアすべき課題もあるが、それはまた別の話)

 最近のクルマには、衝突しそうになると自動でブレーキをかけたり、車線をズレて走っていると走行位置を矯正したり、など、安全性を高める新技術がどんどん搭載されている。こうした技術を突き詰めていくと、クルマに運転を任せる自動走行車に行き着く可能性が高い。

 そうなった時のクルマの魅力とは何だろうか? 今年のモーターショーは、その問いに対する一つの答えを見せてくれた。

 東京モーターショーは今月11日まで開催している。クルマ好きの人も、そうでない人も、一見の価値があるイベントだと思う。


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