ネット社会のさまざまな問題を考える −シンポジウム− (最初のページ)

II. パネルディスカッション

4.まとめ

パネルディスカッションで上がった主な意見をまとめて、ネット社会で見られる新しい動きを「光と影」の観点から整理してみました。

 

(1)自己実現・自己表現の場と新しいビジネススタイル
メールマガジンやWebショップなど、個人の自己表現、自己実現の場としてのインターネットの世界が着実に広がっている。そして自己実現の一環として、ネットワークを使った新しいビジネススタイルが育っている。能力や技能のある人は、生活を楽しみながら自分のやりたい仕事をクリエイトしていき、年功序列社会や家庭生活というハンディキャップを持つ女性は、SOHOビジネスに自己実現のチャンスを求めている。

(2)コミュニティの成長と課題
コミュニティ単位での活動が活発化している。価値観の共有はコミュニティへのコミットメントを強める大きな要因になっており、オープンソース、ネットワークボランティアといった、互酬性に基づく新しいモデルも育ちつつある。
非営利のNPO的コミュニティは、組織が拡大するにつれ、運営者側の経済的、人的な負担が増大しているという問題もある。ボランティア精神を基本として発展してきたNPO的なコミュニティ活動にも、今後は互酬的な経済を導入してしかるべきではないか。

(3)匿名によるコミュニケーションの問題
メンバーのコミットメントがしっかりしたコミュニティにおいては、匿名によるコミュニケーションのトラブルは特になく、むしろフランクに発言できるメリットの方が大きい。結局、ネット上のコミュニケーションは本人の資質による。コンピュータによるコミュニケーションは基本的に文字によるやりとりであり、相手にきちんと意図を伝えられるよう、日本語教育をきちんとする必要がある。
特定の目的を持った人の集まりであるコミュニティでは匿名性の問題はないが、それはネット一般にはあてはまらない。またコミュニティにおける信頼感に基づく善意のコミュニケーションに一部の悪者が闖入して撹乱される危険がないとはいえない。そうなったときどうするかを考えておく必要がある。

(4)共感を求めるコミュニケーション
ネット社会は現実社会に比べて感情が支配する部分が大きい。メンバーのコミットメントが強いコミュニティほど、メンバー間で共感を求める意識や、情報交流により教えあい助け合う互助的な意識など、いい方向に作用する。しかし、いったん感情がもつれると、現実にはありえないフレーミングに発展する恐れもある。今後はネット社会の影響を受けて、現実社会でも、感情に左右されて非常識な行動に出る人が増えることも考えられる。


(次のプログラム)閉会の辞