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[ページング&キャスティング]
減速感を強める米国の片方向ページング市場

 1999年の米国主要ページング事業者のアニュアル・レポートは、米国のページング市場があいかわらず順調に拡大しているという期待を覆す結果となった。特に片方向ページングの世界的な衰退傾向は米国でも決して例外ではなく、ページング事業者はこれまでの戦略の転換を迫られている。

 米国で株式を公開している企業は、SEC(証券取引委員会)に対しアニュアル・レポートの提出義務を負うが、最大のページング事業者のページネットは、 期限を大幅に過ぎた2000年5月にようやくそれを提出した。同社は、加入数こそ米国最大を誇るが、従来からの薄利多売戦略が経営を圧迫し、その後経営資源の統合や収益性を向上させるためのリストラ策を打ち出したが思うように効果が表れず、1999年11月にはアーチ・コミュニケーションズとの合併計画を発表した。今回の提出の遅れも、合併申請手続きに大幅な稼動が割かれたことを原因としている。同社の累計加入数は1997年をピークに減少に転じ、1999年には対前年比で約112万加入もの大幅な純減(-11.1%)を記録している。

 アーチ・コミュニケーションズの累計加入数は、一見順調に拡大しているように見える。しかし、対前年比63%増という1999年の大幅な加入数の伸びは、6月に買収を完了したモービルメディアの加入数が加算されたためであり、この買収効果を除くと逆に89,000加入の純減になる。同社は、もともと買収を繰り返し米国第2位の規模にまでのし上がってきた事業者であるが、買収効果を除いても加入数が純減となったのは初めてである。次いで、米国第3位の規模の事業者であるメトロコールは、1998年10月にAT&Tワイヤレスのページング部門を買収し120万加入を獲得したが、1999年も加入者数を拡大している。これは、買収と並行してAT&Tワイヤレスと結んだ5年間のリセール契約により、「AT&T」という強固なブランドと670ヵ所もの販売店網を獲得したことも影響している。しかし、もともとAT&Tワイヤレスの1加入当たりの営業費用はメトロコールのそれよりもかなり高く、一方ではこの買収が営業費用の増大、そして営業損失の増大を引き起こしている。また、1999年12月にページマートから社名を変更したウェブリンク・ワイヤレスの加入数は、1999年に初めて純減を記録した。純減の内訳を見ると、全てが片方向ぺージングの減少であり、同社が今後の事業戦略の柱に位置づける「ワイヤレスデータ部門」(送達保証ページング、双方向ページングなど)の加入数は、逆に1998年のほぼゼロの水準から約6万加入の純増を示している。

 このように、米国では主要事業者の片方向ページングの加入数が明らかに減少に向き始めた。市場機会の縮小に伴い事業者の合併が促進され事業規模が拡大するほど、それを賄う営業費用が膨らみ、ページング事業者は1加入あたりの収益性を高める必要に迫られる。そこで、各事業者が期待を賭けているのが2000年に入って本格化している双方向ページングの提供である。併せて、従来の「ページング・サービス」とは全く異なる「ワイヤレス・データ・サービス」としてのブランド戦略を強力に推進することにより、ユーザーの意識を根本から改革することの重要性を説く事業者も多い。

表

 

高田 博樹

(入稿:2000.6)


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