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[固定・移動通信コンバージェンス]
オーストラリアのハッチソン、FMCサービスで加入者急増

 オーストラリアの新規参入セルラー事業者のハッチソン・テレコミュニケーションズ(Hutchison Telecommunications:サービスブランド名はオレンジ)は、自宅周辺のごく狭いエリアに限り携帯電話(CDMA方式)を固定電話に匹敵する安価な呼毎料金で利用可能とするサービスのオレンジ・ワン(Orange One)の提供を2000年6月に開始し、急速に加入者を獲得しつつある。

本サービスは、基地局から携帯電話までの電波到達時間を正確に測定することにより、端末の所在地をネットワーク側で極めて正確に把握し、自宅周辺の直径約30メートル以内のエリア(ローカルゾーン)に限って固定電話の料金水準と同等の呼毎料金(20セント/呼)での通話が可能となるものである。ローカルゾーンの外では通常の携帯電話の料金が適用される。現在の同サービスの提供エリアはシドニーおよびメルボルンのみであるが、サービス開始後の2ヶ月間で25,000の加入者が同サービスに加入したとのこと。なお、ローカルゾーンには自宅の住所等を予め登録することとなるが、1年につき3回までは無料で変更可能となっている。

 本サービスに加入すると、固定電話と携帯電話のそれぞれの電話番号が付与され、固定電話の電話番号はローカルゾーン内でのみ利用可能となる。ローカルゾーンを離れる場合はこの番号は利用できないが、固定電話の番号に掛かってきた着信呼を携帯電話の番号に転送することが可能となっている。また、発信の度に端末のディスプレイに“LOCAL”もしくは“MOBILE”と表示され、適用される通話料金が判別可能となっている。

 本サービスが成功を収めている一因として、オーストラリアの固定電話を取り巻く特殊な事情が挙げられている。同国のインターネット利用者比率は約50%と比較的高い水準にあるが、2本目の電話回線を契約している家庭はわずかに10%程度に過ぎない。それは、固定網事業者のテルストラが需要に応じきれずにバックオーダーを抱え、いわゆる“積滞”が発生しているためであると言われている。そこで、即座に利用可能な2本目の電話としてオレンジ・ワンに加入し、インターネット接続用に従来の固定電話、音声通信用に携帯電話を利用するユーザーが急増しているとのこと。

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木鋪久靖(入稿:2000.11)


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