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韓国の第3世代携帯電話免許、
まずはSKとKTが獲得

 第3世代携帯電話免許の付与プロセスにおいて混迷の様を呈していた韓国で、ようやくその「第1幕」が終演した。2000年12月15日、情報通信部はSKテレコム率いるSK-IMT、韓国通信(KT)率いるKT-IMTの2つのコンソーシアムに対し、比較審査で第3世代携帯電話免許を付与した。韓国で付与される免許数は3。しかし、W−CDMAは実質2免許(方式任意1免許含む)、残り1免許はcdma2000と指定されたため、W−CDMAの2枠を巡る3者の争奪戦が繰り広げられた。

 2000年7月に情報通信部が発表した第3世代携帯電話免許の付与方法に関するガイドラインでは、選択する技術標準方式を事業者の任意とした3つの免許を付与することが示されていた。この3つの枠に対し、当初はSK-IMT、KT-IMT、LGテレコム率いるLGグローコム、固定網事業者のハナロ通信率いる韓国IMT-2000の4つのコンソーシアムが申請の意思を示していたが、韓国IMT-2000は参加する企業の他コンソーシアムへの流出が相次ぎ、9月には「一旦」解散した。

 このまますんなりSK、KT、LGに免許が付与されることになるかと思われたが、この間、3者ともが技術標準にW−CDMA方式を選択する意向を明らかにした。そこで、CDMA製品の輸出減少による貿易収支の悪化、CDMAの特許料を糧とする米国との貿易摩擦等を危惧する情報通信部は、国内のCDMA開発メーカーの保護、CDMA陣営を牽引してきたハイレベルな技術および投資の保護という大義名分のもと、既にW−CDMA方式の採用を表明しているこの3者の中からcdma2000に鞍替えするコンソーシアムを確保すべく調整に入った。そこで、情報通信部はこの調整期間を設けるため、審査への申請時期を当初予定の9月25-30日から10月25-31日へと約1ヵ月繰り下げた。その後、情報通信部は、cdma2000を採用する場合は免許料を割引く、審査基準を低くするなどの優遇策を講じて調整にあたったが結局失敗し、10月に入ると、付与する免許の技術標準を、W−CDMAが1免許、cdma2000が1免許、事業者の任意1免許とするという方針の修正を発表した。

 そして、免許申請期間にLG、KT、SKの順で予定通りW−CDMA方式の申請が行われたが、最終日の2000年10月31日、一度撤退したハナロ通信率いる韓国IMT-2000が、突然cdma2000方式の免許申請を行い関係者に大きな衝撃を与えた。もしハナロ通信が、優遇策として低く設定された審査基準をクリアした場合、W−CDMA方式の2枠に漏れたLG、KT、SKのいずれか1コンソーシアムは、選択する技術標準の問題以前に第3世代携帯電話免許を獲得する機会さえ完全に失ってしまうことになるからである。韓国IMT-2000には12月初めの段階で900社以上からの参加依頼があったようであるが、4つのコンソーシアムの中では唯一無線通信の経験がなくビジネスプランの策定が不十分だったのか、最終的には今回の審査から漏れる結果となった。

 注目されるのは韓国で最も早くからW−CDMA技術の開発に専念し、この分野では他社よりもはるかに高度な技術を持つと自負するLGテレコムの去就である。しかも、審査段階におけるKTとの評価得点差が僅か1ポイントにも満たず、LGは納得できる詳細な説明が情報通信部から示されなければ訴訟に持ち込むことも辞さないと表明している。残りのcdma2000方式1免許については、2001年3月の再審査で付与される予定であるが、特にLGを通じて韓国市場でのプレゼンス拡大を狙う海外キャリアにとって、「第2幕」までのここ数ヵ月は全く目が離せない状況である。

 

高田博樹(入稿:2001.1)


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