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ハイパーアジア
2000年4月掲載

携帯電話事業者の再編が進むタイとフィリピン

   2000年3月23日の毎日新聞(朝刊)は、DDIが、傘下の携帯電話会社であるツーカー3社と、セルラー7社(株式を店頭公開している沖縄セルラーを除く)を年内に合併される方針を明らかにしたと報じている。セルラー7社については合併後、DDI本体へ事業統合することも検討している。DDIは同年10月に日本移動通信(IDO)、KDDとの3社合併を予定しており、経営の効率化とともに、携帯電話事業で全国一律のサービス体制を整えるのが、合併の狙いである。

 タイでは6事業者、フィリピンでは5事業者が、それぞれ携帯電話サービスを提供している。どちらの国も、携帯電話の加入者は順調に増加しているが、日本と同様に、料金競争やサービス競争に生き残れるよう、合併を含む経営の効率化を進めている。 

タイの携帯電話事業で大手の企業再編進む

チャロン・ポカパン・グループは、WCSを買収し、携帯電話事業に本格参入する。業界2位のTACは外資の資本参加を受け財務基盤を強化する方針で、タイでも次世代のインターネット端末として有力視される携帯電話事業をめぐる、大手企業の競争が本格化してきた。
日経産業(朝刊)2000.3.10

 チャロン・ポカパン(CP)グループは、タイを代表する華人財閥で、農業中心のコングロマリットである。CPは、米ベル・アトランティックと組んで、同国の固定網建設にも参画している。

 CPは、傘下の持株会社バンコク・テレコムを通じて、WCSの株式98%を買収する。投資額は30億バーツ(1バーツ=約2.9円)。通信大手のユナイテッド・コミュニケーションズ傘下のトータル・アクセス・コミュニケーション(TAC)などから買い入れる。取得したWCSの株式のうち、約20%は、ベル・アトランティックに売却する意向。WCSはDCS1800方式の携帯電話サービスを提供している。業界2位でAMPSとDCS1800を提供しているTACは外資の資本参加を受けて財務基盤を強化する方針である。 

■フィリピン、携帯電話会社2社の事業統合、NTTコム出資へ

PLDT(フィリピン長距離電話会社)が傘下の移動体通信2社の事業統合に乗り出す。経営難のピルテルの携帯電話事業を、最大手のスマート・コミュニケーションズに移すのが柱。PLDTはNTTコミュニケーションズから約800億円の出資を受ける予定だが、ピルテルの債務処理が条件。
携帯第2位のグローブ・テレコムはイスラコムとの合併を決めており、同国の携帯業界は「スマート対グローブ」に二分されることが確定的となった。
日経産業(朝刊)2000.3.15

 フィリピンの通信最大手、PLDT(フィリピン長距離電話会社)は、傘下のピリピノ・テレフォン(ピルテル)の携帯電話事業(AMPSを提供)を、最大手のスマート・コミュニケーションズ(D-AMPS、E-TACSを提供)に移すよう計画している。

グラフ  日経産業新聞によると、ピルテルは1997年から3期連続で純損失を計上、約8億6,000万ドル(約950億円)の債務の返済が滞っている。このうち3分の1の約2億7,900万ドルは丸紅に対する工事代金の未払い。PLDTは債務を株式に転換するとともに、ピルテルの再建策を軌道に乗せ、債務者の理解を得たい考え。

 PLDTの計画では、順調なスマートの経営に影響を与えないため、ピルテルとの合併は行わないが、2000年末までに事業を統合、ピルテルの携帯の顧客を事実上スマートの管理下に置く。スマートはピルテルが保有する基地局や、地域と地域を結ぶ基幹回線ネットワークを利用、運営する。

 また、スマート、ピルテル両社が行っている固定回線の電話事業はPLDTに集約する。
スマートは1999年末時点で携帯の契約台数が102万5,000台。業界3位のピルテルは45万7,000台。両方合わせて、同国の携帯シェアの5割に達する。両社ともアナログ、デジタル両方式を扱っているが、今後はデジタルに一本化する。

 携帯2位のグローブ・テレコム(GSMを提供)は独テレコムが出資するイスラ・コミュニケーションズ(イスラコム、GSMを提供)との合併を決めており、同国の携帯業界は「スマート対グローブ」に二分されることが確定的となった。

NTT西日本 企画部 武川 恵美
編集室宛 nl@icr.co.jp
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