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ハイパーアジア
2003年1月掲載

中国、日中間の国際通信の接続料を値上げ

  国際通信は、発信国側の通信事業者が、着信する相手国側の設備を利用するため、2国間のトラヒックの不均衡により、一方の事業者のコスト負担が重くなるのを回避する目的で、「国際清算料金(International Settlement Rate)」と呼ばれる単位料金を用いて、お互いのコストを清算している。

 国際電話を利用したエンドユーザーが通信事業者に支払う通話料=「収納料金(Collection Charge)」とは別に、清算料金は、通常、2国間の事業者の交渉で決められる。お互いの発信するトラヒックが均衡していれば、コスト負担は生じないが、発着信トラヒックが不均衡な場合、発信超過分数に応じて、清算料金を支払うことになっている。多くの途上国は、先進国に対して、着信超過となっているため、清算料金による決済では受取り側となっている。

■中国の一方的な引上げ

 日本の新聞各誌は、「2002年10月末、中国電信など大手事業者を含む、複数の国際通信事業者が、『11月1日以降の通話分から、接続料金(国際清算料金)を引上げる』と日本の通信事業者に通知があった」と報じた。
 中国の国際通信事業者は、清算料金の引上げは中国情報産業省の決定であり、料金は1分当たり17セント(約21円)以上にするとしている。日中間の清算料金は公表されていないが、日本の電話会社が中国電信などに支払っていた従来の単位料金の5〜6倍と見られている。

■中国の国際通信トラヒック

 日本からの国際通信のうち、中国への発信は、米国に次いで2番目に多く、年々増加傾向にある。2001(平成13)年度の日本からの発信トラヒックは3億9,400万分で、全体の15.3%を占める。中国からの着信トラヒックは同年で、1億4,000万分で全体の8.06%、米国、韓国、英国に次いで第4位である。
 日本の国際通信事業者は、発信超過分に相当する清算料金を、中国側の事業者に支払うことになる。

■ 日本側の対応

 前述したように、清算料金は本来、事業者間の交渉により決まるが、民間企業同士の協議が難航する可能性も踏まえ、2002年11月、総務省は日本の国内主要4社から詳しい事業を聴取した模様。総合通信基盤局では「あくまで事業者同士の協定事項だが、実態を見極めたい」としている。ヒアリングの対象は、NTTコミュニケーションズ、KDDI、日本テレコム、ケーブル・アンド・ワイヤレスIDCの4社で、このうち、C&W IDCが国際電話事業のウェイトが大きく、最も影響を受ける見込みである。
 なお、12月26日までに、KDDIと日本テレコムは中国側の要求を受け入れる方針を固めている。清算料金引上げ後も、KDDIは国際電話全体の収支でカバーし、収納料金への転嫁はしない考えであるが、日本テレコムは値上げするかどうかは今後検討するとしている。

<寄稿> 武川 恵美
編集室宛 nl@icr.co.jp
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