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ハイパーアジア
2003年2月掲載

2003年のアジアの電気通信市場

 アジアの電気通信市場は、固定電話、携帯電話、インターネットの、すべての分野において成長を続けている。中国の携帯電話加入者が、米国を抜いて、世界第1位となり、韓国はブロードバンドの成長・拡大を続けている。アジアはインターネット利用者が最も急速に増加している地域であり、固定電話回線数でも世界最大の地域となっている。2003年には、インドが、ようやく成長のスパートを切り、中国に次ぐ通信市場を目指すだろう。しかし、アジア地域の多くが、依然として、通信・IT分野において、発展の初期段階である。

 アジア地域で見られる力強い成長にもかかわらず、世界的な通信・IT市場の低迷は、2001年から2002年にかけて、アジアを襲った。Asian communications(2002年12月号)では、「アジアの通信事業者のプロフィット・マージンを劇的に引下げ、株価にも影響を与えた」としている。同時に「アジアの事業者の多くは、1990年代後半の通貨・経済危機から負っている負担から逃れられていない。財政的に厳しい事業者は、合理化およびM&Aの対象となった」。2002年12月に報じられた、シンガポール第2位の事業者であるST TelemediaによるインドネシアのPT Indosatの買収も、そういった流れの1つと言える。Asian communications(2002年12月号)に掲載された「Asian Telecoms: 2003 and beyond」(Paul budde Communications Pty Ltd)の記事を引用しながら、2003年のアジアの通信市場を占う。

■固定電話市場

 通貨・経済危機により若干ペースダウンしたものの、アジアにおける固定回線の増加率は10%を超えており、世界平均の2倍を維持している。先述のAsian communications(以下、AC)によれば、アジアの途上国、すなわち、中国、インド、インドネシア、マレーシア、フィリピン、タイおよびベトナムにおいて、アジア全体の固定回線(1億5,000万)の90%が提供されている。固定回線の市場は2006年までに1,400億ドルに達すると予想されている。

 インドは、今後数年間は2桁成長を続け、2006年には150億ドル市場に達する一方、韓国、香港、シンガポールの固定電話市場の増加は、緩やかなものになるだろう。

■携帯電話市場

 アジアは、世界で最も急速に携帯電話市場が成長している地域の1つであり、2002年の加入者は3億5,000万、年間1,500億ドル以上(1994年には1,000万ドル)となっている。2003年には1,700億ドルに近づくと見られている。

 1994年から10年間の携帯インフラに対する投資は、3,000億〜6,000億ドルに上り、2004年には加入者が5億人を超えると見られている。2000年にはアジア太平洋地域が世界に占める加入者の割合は35%だったが、2010年までには過半数を超えるだろう。

■インターネット

 ACは、アジアにおけるインターネットの利用者は、2002年12月には1億5,500万だったが、2003年には2億5,000万になると予想している。アジアのインターネットの成長は、日本、香港、韓国、シンガポール、台湾が主導している。

 さらに、中国は2003年の1年間に63%、インドは44%成長するとしている。中国インターネット情報センターは、2003年1月、2002年末までの中国のインターネット利用者数が前年比75.4%増の5,910万と発表した。同センターの予想では、2003年の成長率は46%、年末の加入数は8,630万で、日本を抜き、米国に次いで、世界第2位となるのが確実視される。インドは2005年までに利用者数2,130万、アジアでは、中国、日本、韓国に次ぐ第4位のインターネット大国となろう。

 インターネットやIPサービスを含むデータ・サービス市場は、アジアの通信市場全体の24%を占めており、2006年までに市場全体の35.5%、収入規模で490億ドルになるが、このような成長にもかかわらず、利益が非常に低いと、ACは指摘する。

■ブロードバンド

 次世代のインターネットサービス、双方向TV、ストリーミングなどの効率的な伝送のため、アジアの国々は積極的にブロードバンドを取り入れようとしているが、主流は依然ナローバンド(狭大域)である。アジアにおけるブロードバンド加入者は、1995年の50万から、2003年までに約3,500万と予想される。

 ブロードバンド需要の高い韓国では、コストよりも自国のコンテンツが不足していることが問題となっている。香港は、高度な電気通信インフラの整備された地域であるが、ブロードバンドの加入者の伸びは比較的緩やかで、2002年始めには、ブロードバンドでアクセスはインターネット利用者の15%に過ぎない。シンガポールでは、ほぼ100%の世帯および事業所にブロードバンド・インフラが行き渡っている。同国のブロードバンド加入者は2005年までに130万に達すると予測されており、人口410万の国としては非常に高いブロードバンド普及率になろう。

 中国は、2000年末にブロードバンド加入者が17.5万に対して、ナローバンド加入者は88万であった。2002年は中国の「ブロードバンド元年」と位置付け、中国電信も大々的な営業キャンペーンを展開するなど力を入れているが、ACによれば、十分な成長は示していない。

 台湾は、2010年までに米国レベルのブロードバンド・アクセスを実現することを目指している。2000年末に10万加入、インターネット接続の3%だったブロードバンド加入者を2003年末までに300万まで増加する計画である。

<寄稿> 武川 恵美
編集室宛 nl@icr.co.jp
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