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ハイパーアジア
2003年9月掲載

ベトナム、携帯市場の競争に弾み

 ベトナムの携帯電話市場で、2003年内に2社が新規にサービスを開始する。これまで同国の携帯電話市場は、郵電公社傘下の2社が独占的に提供しており、2002年末の携帯電話加入者数は185万と規模は小さいが、料金面などで競争が始まれば、市場拡大に弾みがつきそうだ。

■べトナムの携帯電話市場

 ベトナム郵電庁(DGPT、現在は郵便通信省 Ministry of Post and Telecommunication、2002年下期の省庁再編で格上げ)は、急成長分野である携帯電話市場に、既存の固定網NCCを参入させ、携帯インフラを向上させる政策を採っている。NCCは、Saigon PostelとVietelだが、最初に携帯電話免許を付与されたのはSaigon Postelで、政府による新技術の後押しもあり、既存事業者のGSMに対抗すべく、CDMA2000 1xを導入することとした。

 ベトナムではこれまで固定網の支配的事業者である郵電公社Vietnamese Post & Telecommuniations(VNPT)傘下の2社がGSMを提供していた。「Mobifone」というサービス名で提供しているVietnam Mobile Service Company(VMS)は、DGPTとスウェーデンのComvikのBCCで、2002年末の加入者数は49.5万である。「Vinaphone」を提供するVietnam Telecom Services CompanyはVNPTの100%出資で、105万の加入者を持つ。またSaigon Mobile Telephone Companyは、Saigon P&Tとシンガポール・テレコムのBCCで設立され、設立直後は他社の携帯加入者を奪う勢いであったが、「Vinaphone」への加入者移行でネットワークの提供は終息している。

*BCC=Business Cooperation Contract:事業協力契約、詳細は「ベトナム、通信自由化に向けた道のり」(Hyper Aisa 2001.10)を参照のこと。

 同国の携帯電話加入者数は、2002年末に約185万、前年比45%増になっている。急成長している分野であるが、人口8,000万に対して、普及率は2%程度とまだまだ低い。

■ベトナム初のCDMAサービス開始

 Saigon Postelは、サービス開始に当たり、シンガポールに本社を置く韓国系企業であるSLDテレコムとBCC契約を結んだ。SLDテレコムは、SKテレコム、LG電子の共同出資会社で、本BCCでは、SKテレコムが通信サービスを、LG電子は設備と端末を担当する。

 Saigon Postelは、1年以上の計画・準備期間を経て、2003年7月に「Sフォン」を開始した。全国61市・省のうち、当初はハノイ市、ホーチミン市など12市・省で始め、来年にも全国展開する予定で、総投資額は2億5,000万ドルに達する見通しである。

 「Sフォン」の通話料は、市内通話1分当り1,800ドン(約14円、1ドン=約0.008円)と、GSMを提供する既存2社と同じだが、他社が1分単位で課金するのに対し、「Sフォン」は、2分目以降、10秒ごとに課金する。実際に支払う金額は、2割程度安くなる計算という。

 サービス開始1ヶ月間で、若者層を中心に5,000人の契約者を集めており、2005年までに15〜20万、2010年までに100万加入を目指す。

 既存2社は対抗上、8月から契約料金をそれまでの60万ドン(約4,800円)から「Sフォン」と同じ40万ドン(約3,200円)に引下げた。今後、課金方式も変更する予定としている。

■人民軍傘下のVietelは年末にも参入

 べトナム人民軍傘下のVietel社も、年内にGSM方式で参入する。同社は軍事目的で構築した通信ネットワークの一部を商用化しており、IP電話では、60%のシェアを握る。その他、電力公社傘下の通信会社など2社が参入を表明している

 ベトナムでは、これまで外国企業にはBCC形態でしか参入を認めていなかったが、2005年末には現地資本との合弁による参入を許可する予定である。実現すれば、外国企業も経営に参画できるようになり、参入が増える見通しである。

<寄稿> 武川 恵美
編集室宛 nl@icr.co.jp
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