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2002年9月掲載 |
第4回
米国のIT戦略(下)
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政策研究グループ リサーチャー 清水憲人 shimizu@icr.co.jp |
■高速ネット普及率で4位に落ちる第3回(米国のIT戦略(上)〜広帯域価格競争で日本の後塵拝す〜)では米国におけるADSL市場への競争導入が失敗し、料金が高止まりしていることを指摘した。では普及率はどうだろう? 少し古いデータ(2001年6月時点)になるが、OECDレポートによればブロードバンド普及率の高い国は、1位:韓国、2位:カナダ、3位:スウェーデン、4位:米国である(日本は12位)。「世界で4位なら十分ではないか」などと言ってはいけない。「インターネットの原型を創り、今日まで発展させてきたのは自分達である」との自負を持つ米国である。インターネットにおいて1位ではなく、またトップの韓国に大差をつけられているというのは受け容れ難い事実であるに違いない。 このような状況を受けて、現在の米国のブロードバンド政策には多くの批判がある。連邦議会の議員達もブロードバンドを普及させるために様々な法案を提案している。 まず、そもそも国家レベルの明確なIT戦略/ブロードバンド戦略が存在しないことを批判する声がある。これについて、2000年の大統領選挙で民主党の副大統領候補だったリーバーマン上院議員は、「全米ブロードバンド戦略法」を提案している。同法案は、高速インターネット・サービスの普及について目標を提示することを大統領に義務付けるものである。ケネディ大統領が「10年以内に人類を月に送る」と宣言したように、政策を明確に目標化しようとする動きである。 ■規制ないCATV接続が優勢 また規制緩和によってブロードバンドの普及を推進しようとする動きもある。 第3回で「米国のADSL市場は地域電話会社のほぼ独占である」と指摘した。独占市場を規制緩和するとはどういうことなのか?と思われるかもしれない。実は米国のブロードバンド市場ではADSLよりもケーブルTV会社が提供する高速インターネット接続サービス(ケーブル・モデム)の方が数が多いのである(グラフ参照)。しかし過去の経緯から、電話会社が提供するADSLには厳しい規制が課せられ、一方、ケーブルTV会社が提供するケーブル・モデムは規制されていない。そこでこのような状況を改善することで、ブロードバンドの普及を促進しようという訳である。 一方、ブロードバンドを普及させていく過程において、ルーラル地域(いわゆる過疎地域)が取残されることを懸念する声もある。ホリングス上院議員は、ルーラル地域におけるインフラ整備に貸付けを行う基金の設立を提案している。 テロ対策や企業スキャンダルへの対応に追われる米国政府だが、ブロードバンドの普及についてのアクションを求める声も次第に強くなってきているようだ。 日本工業新聞「e-Japan戦略 IT立国への取組みと課題」2002年9月20日掲載 |
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