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情報通信の新潮流
2002年9月掲載

第7回

電子政府・電子自治体
〜効率的で小さな政府めざす〜


社会公共システム研究グループ
主幹研究員 高橋 徹

■国、地方一体で情報を共有

 電子政府・電子自治体、e−ガバメントとは、一体何をしようとしているのか。また、いつからこのようなことが言われるようになったのか。最初に公式文書に登場したのは旧総務庁による1997年の「行政情報化推進基本計画」であり、「『紙』による情報の管理からネットワークを駆使した電子化された情報の管理へ移行し、21世紀初頭に高度化された行政、すなわち『電子政府』の実現を目指す」こととされた。また、e-Japan戦略では、「行政内部や行政と国民・事業者との間で書類ベース、対面ベースで行われている業務をオンライン化し、情報ネットワークを通じて省庁横断的、国・地方一体的に情報を瞬時に共有・活用する新たな行政を実現するもの」と定義されている。
 ネットワークビジネスにおけるBtoB、BtoCと同様に、市民・企業と行政とでネットワーク化された関係をGtoB、GtoC、また国や自治体などがネットワークを共有する関係をGtoGということがある。具体的には、公共施設の利用予約、住民票の交付申請、年金、保険などの申請、所得税の確定申告、輸出入の手続き、公共事業における入札、物品の調達、行政情報の提供、情報公開など、各種申請・届出、証明書の交付、手続き、申し込み、予約のための文書を電子化し、ネットワークでやり取りしようとするものである。国の法令に基づく申請・届出等手続きは約5,100件もあり、これらフロント業務の電子化とともに役所内部の業務、人事管理、文書管理などのバックオフィス業務の電子化も進められていくこととなる。さらに、国と自治体、自治体間で情報共有できる情報システム(LGWANなど)整備も進められている。
 e−ガバメントは、先進国、途上国を問わず世界的な潮流になっており、共通するのは、効率的で小さな政府を目指していることである。

■情報の格差やトラブルも

 しかし一方、インターネットの活用面などにおける情報格差、デジタルデバイドは顕在化しつつあり、最近実施された住民基本台帳ネットワークシステム開始にあたってのトラブルなど、問題がないわけではない。しかしながら電子政府・電子自治体の実現に向けた取り組みは、今後一層加速されていくものと考えられる。
 これから数回にわたり、電子入札、電子申請、電子投票など、具体的な電子政府への取り組み事例を交え、今後の電子政府の姿をさぐることにしたい。

電子政府・電子自治体に向けた主な政府の動き

1997年12月  行政情報化推進基本計画
1999年12月 ミレニアムプロジェクト
2000年3月 申請・届出等手続き電子化推進のための基本的枠組み
2000年12月 自治事務等に係る申請・届出等手続きのオンライン化の推進に関する政府の取組方針
2001年3月 e-Japan重点計画
2001年6月 e-Japan2002プログラム
2002年5月 e-Japan重点計画2002

日本工業新聞「e-Japan戦略 IT立国への取組みと課題」2002年9月26日掲載

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