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情報通信の新潮流
2002年9月掲載

第8回

電子入札
〜メリットは効率化と透明性の向上〜


社会公共システム研究グループ
研究員 塚田 英樹

■一連の業務をネットで追う

 「e-Japan戦略」で示された電子政府の実現目標年度を目前に控えて、各地で具体的な取組みが見られるようになってきた。こうした中で、公共事業の入札関連業務の効率化やコスト削減の手段として注目を集めているものが電子入札である。電子入札とは一連の入札業務を電子化し、インターネットを用いて公告および入札・開札、結果の公表まで行うことをいう。

 国土交通省では公共事業支援統合情報システム(CALS/EC)の一環として、2001年度から大規模な直轄公共事業を対象に電子入札を実施している。業務効率化による直接効果として年間260億円のコスト削減が試算されている。今後は順次適用範囲を拡大し、2004年度には国土交通省の全公共事業約44,000件において電子入札を実施する予定である。

一般な「電子入札」の概要 自治体における電子入札の活用事例としては、横須賀市の取組みが有名である。同市では、かねてから現場説明会の廃止や条件付き一般競争入札の導入など入札制度改革に積極的に取組んできた。そして、一層の業務効率化を目的に、2001年9月に電子入札を導入した。
 市のホームページから入札情報を入手した事業者は、事前に配布された専用のソフトを利用し、入札申請書・入札価格など入札に関するデータを、インターネットを用いて送受信する。市職員が予定価格を投入すると即座に落札業者が決定される仕組みである。

■競争原理でコスト削減

 電子入札のメリットは、事業者は市役所へ出向いたり関係書類を作成する手間を削減し、市も入札関連業務の効率化と入札の透明性を向上させることができる点である。加えて、同市では一連の制度改革と電子入札の導入により、入札参加者数は約2倍(平成9年9.2社/件→平成12年17.9社/件)に増え、平均落札率も約10%下落(平成9年度95.7%→平成12年87.3%)するなど、競争原理によるコスト削減効果も生み出されている。

 これからの自治体は限られた予算の中で、いかに住民サービスを向上させるかが問われる時代になってくる。電子入札などITをうまく活用する自治体は、業務効率化・コスト削減により、質のよい住民サービスを提供することが可能となる。その反面、こうした取組みが遅れている自治体およびその住民は、相対的な不利益を被ることになる恐れがある。電子自治体が本格化してくると、こうした自治体間の格差がより明確になってくるであろう。業務改革とともに、ITの活用度合が自治体の運営に大きく影響する時代を迎えつつある。

日本工業新聞「e-Japan戦略 IT立国への取組みと課題」2002年9月27日掲載

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