ホーム > レポート > IT立国への取組みと課題 >
情報通信の新潮流
2002年10月掲載

第13回

デジタルデバイドと地域情報化
〜きめ細かい情報政策が不可欠〜


社会公共システム研究グループ
主任研究員 三浦 大典

■接続率に大きな格差

 これまで見てきたとおり、本格的な電子政府・自治体の時代が到来すると、入札や申請などの行政窓口サービスがインターネットでも受けられるようになる。確かに便利になるかもしれないが、それはパソコンやインターネットを利用できる人に限られる点に注意しなくてはならない。「デジタルデバイド」という言葉がある。情報格差と訳されるが、年齢や性別、職業、年収などによってパソコンやインターネットの利用に格差が存在すること、その結果として不利益がもたらされることを意味する言葉である。現在の行政サービスは誰もがほぼ平等に受けられるが、電子自治体時代の行政サービスはパソコンを使える人だけが得をするものになるかもしれない。

 都道府県ごとの情報化指標を見ても、インターネットやブロードバンドサービスの普及率、学校のインターネット接続率には少なくない格差の存在が示されている。インターネットがもっとも普及しているのは東京都で45%近い人口普及率だが、最低の高知県では8%に過ぎない。ブロードバンドサービスの世帯普及率は三重県の13.6%がもっとも高く、最低の鹿児島県ではわずか1.3%である。住民の半数近くがインターネットを利用している地域と、1割も利用していない地域がある。数メガ単位の高速常時接続でインターネットを利用できる人もいれば、いまだにISDNがもっとも高速なインターネット接続手段という人もいる。このようなインフラの格差は電子自治体サービスの普及にも関わってくるだろう。また、岐阜県や高知県では公立学校のインターネット接続率が100%だが、大分県では60%に届かない。小学生のころから授業で普通にインターネットを使う生徒とあまり使わない生徒がいることになるが、子供のころの情報リテラシー格差は将来的に何らかの影響を与えるのではないか。

 地方自治体は、地域全体の情報化を進める地域情報化と、行政内部の業務効率化を目指す行政情報化という二つの側面から情報政策を展開してきた。その特徴として、国が提示する指針や構想に基づいて進められるものが多かったことが指摘できよう。しかし、住民すべてが格差なく電子自治体の恩恵を受けるためには、地域の状況や特徴をふまえたきめ細かな情報化施策の展開が不可欠である。つまり、自治体が主体的に独自の情報化に取り組まなくてはならないのだ。情報化の先進自治体といえば財政規模が大きくスタッフも豊富な大都市というイメージがあるが、担当者の尽力によって順調に情報化が進んでいる小さな町役場もある。自治体の情報化担当者のさらなる活躍に期待したい。

インターネット普及率に見られるデジタルデバイド

資料出所:平成14年版情報通信白書
高い <--------> 低い
男性
49.8%
性別 女性
38.4%
10歳台
72.8%
世代 60歳台
15.9%
1000万円以上
55.7%
世帯年収 400万円未満
30.2%
東京都
44.6%
県別人口普及率
(全国平均34.0%)
高知県
8.0%
三重県
13.6%
県別ブロードバンド世帯普及率
(全国平均7.3%)
鹿児島県
1.3%
岐阜県、高知県
100%
公立学校の接続率
(全国平均81.1%)
大分県
59.4%

日本工業新聞「e-Japan戦略 IT立国への取組みと課題」2002年10月3日掲載

▲このページのトップへ
InfoComニューズレター
Copyright© 情報通信総合研究所. 当サイト内に掲載されたすべての内容について、無断転載、複製、複写、盗用を禁じます。
InfoComニューズレターを書籍・雑誌等でご紹介いただく場合は、あらかじめ編集室へご連絡ください。