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情報通信の新潮流
2003年2月掲載

情報通信の新潮流(第6回)

内外ブロードバンド事情 (2)

滝田(写真)
通信事業研究グループ
チーフリサーチャー
滝田 辰夫 takita@icr.co.jp

 さて、前回みたように、2002年後半には1000万を越えるブロードバンド利用者を有する韓国であるが、インターネットの利用者数はどのくらいなのであろうか。KRNIC(韓国インターネット情報センター)の最新のデータによれば、2002年12月末現在で2627万人とされている。実にインターネット・ユーザの約4割がブロードバンド利用者であるということになる。

表:韓国のインターネット利用数の推移

 韓国のインターネット利用者数の伸びは、ここ数年若干緩やかになっているものの、やはり驚異的であるということができる。こうしたインターネット利用の増加、ブロードバンド利用の増加は何によってもたらされたものなのであろうか。

 韓国のインターネットあるいはブロードバンドの進展については、政府の主導的役割が中心的な要因であったかのように言われることが多い。しかし実際にはそれだけではなく、様々な要因が互いに良い影響を与え合った結果というのが妥当な理由であろうと思われる。確かにKII(Korea Information Infrastructure)構想の推進による90年代中頃から後半にかけての光ファイバー幹線網の敷設は、その後経済危機を迎えたことで、供給過剰からくる料金の低廉化に結果的に貢献したと言えよう。またベンチャー育成策を政府として取り組んだことも重要であった。しかし、不況による失業者がPC房(インターネットカフェ)を新たなビジネスとして始め、そしてそれがオンラインゲームというブロードバンドになじみやすいインターネット・アプリケーションを牽引役に広まっていったこともインターネットやブロードバンド普及の重要なポイントであるといえよう。つまり、インフラのみの整備ではなく、そこで使われるものが受け入れられることによって、さらにインフラの利用が進むというパターンであったと考えられる。

 ゲームによって始まったといわれる韓国のインターネット、ブロードバンドの進展はインターネット放送、インターネット電話といったアプリケーション、さらにはオンラインショッピングなどの利用にもつながったのである。この背景には、韓国では地上波放送が平日昼間(午前11時〜午後4時)は中断するという事情もあるであろう。また地上波放送番組については、内容に関する規制も厳しいため、比較的自由に内容を楽しめるインターネット放送の利用が望まれたという事情もあろう。

 先にも韓国におけるインターネット利用者の伸びが緩やかになってきたと述べたが、実は韓国のインターネット利用者の中心は、10〜20代の若い世代である。しかし今後更なる普及を目指すには、若い世代だけではなく、他の世代が利用できるようなアプリケーションの提供が求められるであろう。また、インターネット放送などで、コンテンツの有料化も行われてきており、こうした有料コンテンツのビジネスモデルがどの程度受け入れられるかということも今後注目に値するものである。

日本工業新聞「e-Japan戦略 IT立国への取組みと課題」2003年2月26日掲載

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