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2003年2月掲載 |
情報通信の新潮流(第7回)
内外ブロードバンド事情 (3) |
通信事業研究グループ チーフリサーチャー 滝田 辰夫 takita@icr.co.jp |
今回は米国と中国についてみてみたい。まず米国である。インターネット発祥の地である米国は、統計にもよるが1億6000万人以上の利用者を有するインターネット大国である。しかし、ブロードバンドでは、数の上で韓国に追いつかれそうであり、人口・世帯普及率では完全に水をあけられている。これは何故であろうか。 第一に、ブロードバンド・アクセス料金の問題がある。日本のブロードバンド・アクセス料金は事業者間の激烈な競争の結果、世界でも最低水準にまで低廉化が進んだが、米国ではむしろ値上がりの傾向をみせている。これは市場への競争導入の失敗、ITバブルの崩壊などにより、ADSLを提供する新規参入者が軒並み不振に陥り、倒産などに追い込まれたことが大きいものと思われる。グラフで示したように、米国のブロードバンド回線の内訳で最も大きな割合を占めるものはCATVであり、韓国や日本のようなADSLがブロードバンド・アクセスの主流を占めている状況とは異なっている。 また、米国におけるインターネット利用の中心は、電子メールや情報収集といった、必ずしもブロードバンドでなくとも利用可能なものであり、ブロードバンド移行のインセンティブとなるような魅力的なブロードバンドの利用方法が現時点ではほとんどないということも考えられる。しかし、今後米国においてもオンラインゲームなど、いわゆるエンタメ系コンテンツの需要が伸びることも予想されており、また政策・規制面でもブロードバンド促進のための様々な取組みがなされているため、新たなテイクオフがみられるかどうか注目に値する。 次に中国についてみてみたい。CNNIC(中国インターネットネットワーク情報センター)のデータによれば、中国のインターネット利用者は2002年12月時点で5910万人とされている。1999年12月時点では890万人であったため、実に3年間で6倍以上に成長していることになる。ブロードバンドについては、2002年6月時点で200万人であったが、最近の情報によると、2002年12月時点で660万人にまで増加しており、半年間で3倍以上に成長している。 中国は約13億人という人口を抱えている。従って、人口ベース、あるいは世帯ベースで見た場合の普及率というものは現時点では極めて小さいものである。しかし、わずか数年で3倍、あるいは6倍と増加するペースが持続すれば、そう遠くない将来に、有数のインターネット大国になる可能性もあながち否定はできない。 さらに、近年における中国の発展の仕方をみてみると、地域連邦的な発展形態をとっている。こうした場合、ネットワーク、特にブロードバンド・ネットワークの利用が大きな価値を生み、現在経済発展をしている地域からインターネット、あるいはブロードバンドの利用が更に進展していく可能性がある。しかし負の側面として、地域間の格差、いわゆるデジタル・デバイドが進展する可能性もあり、その点に政府等がどのように対応していくのか興味深いところである。 日本工業新聞「e-Japan戦略 IT立国への取組みと課題」2003年2月27日掲載 |
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