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情報通信の新潮流
2003年3月掲載

情報通信の新潮流(第14回)

デジタル放送の主役、ケーブルテレビ

桜井(写真)
情報流通ビジネス研究G
チーフリサーチャー
櫻井 康雄 sakurai@icr.co.jp

 日本における放送のデジタル化は、CSデジタル放送(1996年開始)、BSデジタル放送(2000年12月開始)を経て、地上デジタル放送(2003年開始予定)へと進んできた。放送がデジタル化されれば当然受信側もデジタル対応が必要になる。あまり知られていないことだが、放送を有線で、つまりケーブルテレビ経由で見ている割合が意外と多い。放送のデジタル化が成功するためには、ケーブルテレビのデジタル化も円滑に進んでいくことが不可欠である。

 地上放送をケーブルテレビ経由で見ている比率は56.4%(表参照)と、過半数を超えている。もし仮にケーブルテレビのデジタル化が遅れると、過半数の家庭で、テレビ視聴に支障が生じることになりかねないのであるから、放送のデジタル化においてケーブルテレビが持つ責任は重い。また、ケーブルテレビは1本の線で放送も通信も提供できるので、データ放送の上り回線を提供するのに好都合である。空中波を直接受信して、別途上り回線を確保するよりも少ない手間で上り回線が確保できるというのは、ケーブルテレビならではのメリットと言えよう。放送のデジタル化という潮流の中で、あまり目立ってはいないかもしれないが、視聴者の受信環境を整備しているという点では、ケーブルテレビは「デジタル放送の主役」である。

 では、ケーブルテレビのデジタル化対応の現状はどうであろうか。2002年ニ月現在でBSデジタル放送への対応済み事業者数の比率は49%(事業者アンケートより。総務省資料)となっている。比較的規模の小さな事業者が多いケーブルテレビにとっては、デジタル化負担は重くのしかかっているというのが実態で、BSデジタル放送への対応状況では、現在のところ、必ずしもすべてのケーブルテレビで対応が完了したというレベルまでは達していない。

 しかし、地上放送の場合には、ケーブルテレビのデジタル化が遅れるとあまりにも影響は大きい。地上放送のサイマル放送が終了するとされている2011年までの間に、すべてのケーブルテレビがデジタル化を終えているはずだと考えたいが、それを今の時点で確実だと言いきることはできない。

 現在はまだ一般的ではないが、光ファイバーを用いて、放送番組を各世帯に送る仕組みも実験を重ね、一部で実用化もされている。視聴者が確実に地上デジタル放送を受信できる環境を整えていく上で、ケーブルテレビだけではなく、光ファイバーによる映像伝送の方途も検討していく必要がある。

日本工業新聞「e-Japan戦略 IT立国への取組みと課題」2003年3月12日掲載

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