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情報通信の新潮流
2003年3月掲載

情報通信の新潮流(第19回)

第三世代携帯電話はいつ本格普及するのか

宮下(写真)
移動・パーソナル通信研究G
リサーチャー
宮下 敬也 miyashita-yukiya@icr.co.jp

 昨年の7月下旬、ヨーロッパでの3Gの状況を示す1つの出来事が起こった。ドイツ国内でのUMTS事業の本格展開を目指していたスペインのテレフォニカ・モビレスとフィンランドのソネラのドイツでの合同事業会社「グループ3G」がドイツにおける全ての事業を中止すると発表したのである。同社は2000年8月に、ドイツにおける3G免許を84億7000万ユーロで取得しており、当初の計画では、2003年にUMTS事業を開始させ、2008年には同市場の13%のシェアを獲得することを目指す、としていた。

 この他にもヨーロッパ諸国では2002年、多くの事業者による、UMTS事業からの撤退、あるいは延期の表明が相次いだ。各事業者ともに、その理由としてUMTS設備構築の遅れ、資金調達が困難であること、また3G対応端末の調達の遅延等をあげている。また、高騰した免許料とさらに高額な設備投資を行うことの結果として果たして3Gビジネスが成長の見込みのあるビジネスであるかどうかという懐疑的な視点が、その積極的な事業展開に注力できない大きな要素となっているようだ。

 3Gにとっては、暗いニュースばかりではあるが、その中で最近いくつかの光が見えてきている。一つは、今まで遅れているといわれてきた端末の供給に関し、海外の主な携帯電話メーカーのノキア、ソニーエリクソン、モトローラなどが最近ようやくUMTS端末を発表してきたことである。世界最大の携帯電話メーカーのノキアもW‐CDMA/GSMデュアル端末(ノキア6650)が商用に近い形で発表している。また、イギリスのハチソンUKが事業展開する「3」がやっと今月末にも一般ユーザーを対象にサービスを開始すると言われている。日本でもドコモの3Gサービス(FOMA)の2月の加入者数が3万7千増となり、N2051やF2051などの新機種投入で単月加入者が1月の十倍以上になった。

 最後に3Gの行方を占ってみたい。現在の状況をみると2003年には、ヨーロッパである程度サービスが開始されると考えられる。ただし、その後のエリア展開は早急なエリア展開を見せる日本とは違い、3G免許条件等をみると三〜八年はかかると予想される。ただ、本格普及となると若干話しは変わってくる。それは、ヨーロッパなどのGSMを採用する諸国ではUMTSとGSMのデュアル端末、デュアルネットワークに対応すると思われるからである。デュアル端末であれば、日本ほどエリアの拡大を気にする必要はない。値段、大きさ、電池の持ち時間など、今までの使い勝手とあまり変わらなく、新サービス・機能を付加できるようであれば、早くて2004年から遅くとも2005年には拡大の方向で市場は発展すると考えられる。

 近年無線LANサービスが立ち上がろうとしており、こちらの影響も無視できないものになっており、3Gをめぐる状況は今後も目まぐるしく変化していくと考えられる。

日本工業新聞「e-Japan戦略 IT立国への取組みと課題」2003年3月19日掲載

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