2002年3月号(通巻156号)
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世界の移動・パーソナル通信T&S
<世界のニュース:市場・企業>

ベライゾン・ワイヤレス、米国初の1XRTTの商用サービス「Express Network」を開始

 米国ベライゾン・ワイヤレスが2002年1月28日(米国時間)に、CDMAの1XRTT技術を利用した高速モバイル・ネットワーク「Express Network」の商用サービスを開始したことを発表した。このExpress Networkの提供により、音声通話から、インターネット・ブラウジング、ストリーミング・ビデオ、Eメールといった様々なワイヤレス・コミュニケーションを実現するという。またExpress Networkは、企業向けアプリケーションにも対応しており、社員の生産性と効率性を向上できるとしている。

 Express Networkのサービス対象地域は、バージニア州ノーフォークからメイン州ポートランドにまたがる米国北東部、シリコンバレーとサンフランシスコのベイエリアを含むカリフォルニア州北部、そして2002年オリンピックが開催されたソルトレイク・シティである。ベライゾン・ワイヤレスが提供する無線ネットワークの20%をカバーしており、530万人以上の米国ユーザー利用できるとしている。今後のエリア拡大については、発表されていない。

 本サービス対応の端末として、米国京セラ・ワイヤレス製のハンドセット「Kyocera KWC 2235」(79.99ドル)、米国シエラ・ワイヤレス製のPCMCIAタイプ「Sierra Wireless AirCard 555」(299.99ドル)の2機種が提供されている。Kyocera KWC 2235をノート・パソコンのモデムとして利用するには、別売の「Mobile Office」キットを併用することとなる。

 Express Networkで提供されるデータ通信速度は、平均で40〜60kbps、最高で144kbpsのデータ通信が可能で、ベライゾン・ワイヤレスの提供している「Mobile Web」、「Mobile Web Plus」、「Mobile Messenger」、「Mobile Office」を Express Network上で利用することが可能である。

 Express Networkの利用料金は月額30ドルで、条件として月額35ドル以上のプランに加入しているユーザーが対象となる。またファミリーシェアプラン、もしくはプリペイドサービスは対象外となっている。サービス期間として今年の3月15日まで月額料金のみで使い放題となっている。3月16日からは、データ・セッションを行っているエアタイムにより各契約プランに応じ課金される形の時間課金方式をとるが、その後、Kbyte単位の従量制課金方式の料金体系も導入する予定である。

Kyocera KWC 2235 Siera Wireless AirCard 555
Express Network対応
京セラ・ワイヤレス製
「Kyocera KWC 2235」
Express Network対応
シエラ・ワイヤレス製
「Siera Wireless AirCard 555」

 Express Networkを利用する際には、端末のボタン/メニューにおいて「SEND/Connect」を押下したのち「Express Network」を選択することにより通信開始を行う。またデータ・セッションが5分間なかった場合は、自動的に回線が切断される形となっている。

 またベライゾン・ワイヤレスは2002年2月7日(米国時間)に、米国クアルコムとCDMAのサービスに関して提携したことを明らかにしており、ベライゾン・ワイヤレスはクアルコムのアプリケーション・プラットフォームである「BREW(Binary Runtime Environment)」に対応したアプリケーションを今春発売する計画である。

 BREWは、CDMA携帯電話機向けアプリケーション開発プラットフォームで、C言語をベースにJava言語や静止画、動画、音楽などを使った携帯電話機向けアプリケーションを、短期間で開発できるようにするためのプラットフォームである。BREWサービスにより、ユーザーは様々なアプリケーションを携帯電話機にダウンロードすることで、用途や好みに合わせて電話機をカスタマイズすることが可能である。

 BREW対応サービスについては、すでに韓国のKTFが世界に先がけてをサービスを開始しているが、ベライゾン・ワイヤレスは、北米で初めてCDMA1Xの商用サービスを開始したとともにBREW対応アプリケーションをリリースする通信事業者となる。

 米国では、3Gへの取組が周波数問題等も重なり難航をしていることもあり、今回のベライゾン・ワイヤレスによるExpress Networkの商用サービス開始は、米国移動通信市場にとっては明るい話題と言えよう。しかしながら出資元のボーダフォンが、そのグループ傘下でW-CDMAを導入する中、今回のベライゾン・ワイヤレスの1X導入、クアルコムとの提携といった一連の動きは異端的ともとれ、今後ボーダフォン・グループとしてどのような形でシームレス・サービスを実現していくのかが最も注目されるところであろう。

米国北東部エリア米国北東部エリア
ソルトレイクシティソルトレイクシティ
カリフォルニア州北部カリフォルニア州北部
移動パーソナル通信研究グループ
リサーチャー 藤澤 一郎

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