2002年4月号(通巻157号)
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世界の移動・パーソナル通信T&S
<世界のニュース:ネットワーク&スタンダード>

クアルコム、「GSM1x」で遂にGSM市場に参入

 CDMA方式の開発で名高い米クアルコムが、遂に世界のGSM市場にCDMA1xをベースとした新しいシステムにより参入してきた。そのシステム名は「GSM1x」である。すでに韓国、米国等でサービスが開始され、最高データ伝送速度144kbpsを提供しているCDMA1xのノウハウを利用し、世界で最も利用されているGSMのインフラ上にオーバーレイすることで実現させたのが、このGSM1xである。

 GSM1xは、CDMA1xと同様、1.25MHzの周波数帯域幅での伝送で最高データ通信速度が307kbpsを実現することが可能である。ただし通常は平均で70〜90kbpsのデータ通信速度となる。すでに多くのGSMオペレータではGPRSを導入しており、今後、EDGEやW-CDMAの導入を計画している各オペレータには、このGSM1xに対し、それほどの魅力を感じないのではないかと考えられる。またCDMAオペレータは、GSMオペレータにローミングなどが可能になることからメリットが大きいが、設備投資を行うGSMオペレータ側にとっては、投資するだけのメリットは無いような感じさえ受けられる。

 以前からクアルコムは、CDMA市場に無いSIMを採用することで、SIMによるプラスチック・ローミングの検討を進めていたが、今回はネットワークを改良することで、GSMネットワーク上でcdma2000端末が利用できるプラットフォームを提供している。ネットワーク構成は、図に示すように、GSM/GPRSのコアのネットワーク上にGSM1xのMSN(Mobile Switching Node)とその基地局を構築することで、GSM/GSM1xのハンドセット、cdma20001xのハンドセットが利用できる環境を整えることができる。

 クアルコムにとっては、GSMが世界市場の約7割を占めている事から、その市場への参入は非常に魅力的なものと言える。クアルコムは、すでにGSM1xに関し、幾つかの企業と提携し、開発を進めている。ノーテル・ネットワークとサムソン・エレクトロニクスは、基地局、インフラ系の開発、またスペイシアル・ワイヤレス(Spatial Wireless)、ウインフォリア・ワイヤレス(Winphoria Wireless)はMSNの開発、そして京セラ、三洋、TCLモバイルは端末の開発に取り組んでいる。すでに2002年2月に行われたフランスのカンヌにおける3GSMコングレスでは、SMS、音声通話、153kbpsのデータ通信のデモンストレーションを行い、また翌月の3月18日から開催されたCTIAワイヤレス2002でもデモンストレーションを行っている。

 最近3Gが未だ市場に浸透していない中、既存の2G、2.5Gといったサービスによるシームレス化が積極的に進められており、韓国では既にGSMとCDMAのデュアルモード端末によるローミングサービスが提供されている。GSMとCDMAのローミングが確立されれば、3GにおけるW-CDMAとcdma2000におけるシームレス化も時間の問題となってくるであろう。GSM1xが、ただ単にクアルコムの戦略というだけではなく、異方式・システム間における利用の弊害をなくし、IMT-2000で掲げたサービスのシームレス化の第一歩となることに期待をしたいところである。

図 GSM1xネットワーク構成
GSM1xネットワーク構成

http://www.qualcomm.com/main/3GSM/gsm1x.pdfより

移動パーソナル通信研究グループ
リサーチャー 藤澤 一郎

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