2002年11月号(通巻164号)
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世界の移動・パーソナル通信T&S
<世界のニュース・移動通信サービス>

ボーダフォン、新サービスを開始

 ボーダフォンは2002年10月24日、新サービス「ボーダフォン・ライブ!(Vodafone Live!)」を英国において開始した。ボーダフォン・ライブ!は、テキストやサウンド、画像イメージ、ビデオなどのコンポーネントを組み合わせたマルチメディア・メッセージング・サービス(MMS)で、これにより写真添付メールの送受信やニュース、株価、天気などの情報サービス、ボーダフォン独自の公式サイトへの接続などが利用できる。端末にはiモードボタンのようなボーダフォン・ライブ!にワンタッチで接続するボタンがあり、それを押すと12のメニューアイコンが画面に表示されるため、ユーザーに分かりやすい設計になっている。なお、ボーダフォンはサービス開始に合わせて3,000万ポンドを費やした大規模なキャンペーンを展開する。対応端末はカメラを外付けするタイプも含め8種類程度が提供される予定で、主力端末はカメラ内蔵のシャープGX10になる。同端末はカラーディスプレーを搭載した折畳みタイプで、販売価格はポストペイドの場合が約200ポンド、プリペイドは350ポンド程度になる見込み。課金方法は写真添付メールの送信が0.36ポンド、着信メロディのダウンロードが1.5ポンドなどメッセージまたはコンテンツ単位となっている。なお、2003年1月31日まで写真添付メールやボーダフォン公式サイトのコンテンツが無料で利用できるキャンペーンを実施している。シャープGX10

 今回のサービスで特徴的なのは、他の事業者がMMSをSMSの延長線上としてとらえ、単にMMSとネーミングするだけで提供しているのに対し、ボーダフォンはボーダフォン・ライブ!のサービス名称で大々的に宣伝している点だ。ボーダフォンは、カメラ内蔵を中心とした独自ブランドの端末を提供する上、さらに主力のシャープGX10に関しては、4ヶ月間はボーダフォンにおいてのみ販売するという契約をシャープとの間で交わしている。それに加え、端末に専用ボタンを具備し、傘下ビザビによるコンテンツを活用した独自のメニューを提供するなど、MMSにとどまらないデータ通信サービスの総合的な戦略を展開する模様である。これらのことから、ボーダフォンは日本の傘下事業者J-フォンの写メールなどの一連の成功から学び取ったということを窺い知ることができる。

 欧州では既に多くの通信事業者がMMSの提供を開始しており、英国でもオレンジ、T-モバイルに続いてボーダフォンが3番目である。各国のオペレータはMMSに対してSMSの様に普及してオペレータの収益に寄与することに大きな期待をよせている。しかしそれに反し、多くのユーザーにとっては端末操作が難しくサービスを使いこなせないため、SMSや日本の写メールのようなブームには至っていない。やはりユーザーに受け入れられるためには、わかりやすくて使いやすいものであるということが重要であり、このままではWAPの二の舞になるのではとの不安が付きまとう。今回発表された一連の端末は対応していないが、サービス名称の「ライブ!」という言葉からは動画サービスへの意気込みも感じ られられる。ボーダフォンの戦略の行く末を期待して見守りたい。

移動パーソナル通信研究グループ
 リサーチャー 吉川 誠
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