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InfoCom World Trend Report
2014年10月24日掲載

2014年9月号(No.306)

※この記事は、会員サービス「InfoCom T&S」より一部無料で公開しているものです。

これまで通信事業者が主に担ってきたインフラとしての通信ネットワークの整備ですが、新しい動きが出てきています。

一つ目は、エリアオーナー設置型通信ネットワークとでもいえるものです。ネットワーク構築にノウハウを有する、主に通信機器製造メーカ等が、土地や建物を所有するオーナーを支援し、例えばスタジアムとか、野外の公園といった一定のエリアで通信環境の整備をうながし、来場者の利便の向上を図ることによってエリア全体の価値向上を実現し、その結果としてエリアオーナーにリターンがもたらされるというものです。

既に報じられている福岡ドームの例では、ボールカウントの進行とともに刻々と変わる投手や打者の諸成績データをはじめ、球場内のショップの宣伝や、比較的空いているトイレの情報など、お客様満足度の向上とお客様支出の向上に大いに貢献しているようです。

二つ目は、米国でのグーグルによる動きです。2012年の秋からGoogleは、カンザスシティ等で光ブロードバンドネットワークの構築と運営を実験的に行ってきました。新たに全米34都市を候補としてグーグルファイバーを展開する予定だと、2014年2月に発表を行いました。このGoogleによる光ファイバネットワークの構築は、実験とはいいながら、戦略的プロセスと手堅い調査を踏んでいると考えられます。

先ず第一は地元に密着して、住宅の密度や、電柱・管路・電力等々の設備状況、そして地形等も実地に調べ、建設工事スケジュール上の支障の有無を従来以上にしっかり確認していることです。その調査を踏まえたうえで、行政によるサービス認可までの流れなども詳細にヒアリングしています。またそれぞれの地区毎に「あと何人」集まればグーグルファイバーのプロジェクトが成立するのかについても、グーグルが日々ネットで情報を開示していることから、コミュニティ内の推進派も加入者を募るという動きにつながっており、全体として積極的なプロジェクト進行を作りだしているようです。

三つ目は日本国内の通信ネットワークの整備にはまだ本格的に適用されてはいませんが、海外ではPFIの手法を用いて民間から資金を募り、通信ネットワークを構築するというものです。最大手はオーストラリアの投資銀行のマッコーリで、早くから世界の通信ネットワークの構築に着目し、欧州の大手キャリア等を手始めにアメリカやアジアにも手を伸ばし、累積100億US$以上を手掛けたと想定されます。

このように見てくると、今後もペイするネットワークが資本の論理でより多く選別・構築されるでしょうが、一方ではその反射としてペイしない過疎地等のネットワークはその赤字がより際立つことも当然想定されます。

過疎地のネットワークについては税金の投入で解決するのか、それともネットワークの経済学が新しい解決法を示してくれるのか。あるいはまたネットワークの恩恵を現実に享受している幅広い関係者が世界的に負担のルールを考えるのか、新しい知恵が求められるのではないでしょうか。

※この記事は会員サービス「InfoCom T&S」より一部無料で公開しているものです。

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