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志村一隆「ロックメディア」
2008年1月掲載
ロックメディア 第3回

ケーブルテレビがYouTubeを茶の間に運ぶ


志村一隆(略歴はこちら)
 アメリカのドラマは、ほとんど全て放送直後からオンライン配信されているが、パソコンで見るしかなかった。もったいない。これからはテレビでも見られる。ケーブルテレビがテレビもインターネットサービスも提供しているからだ。永ちゃんが嘆くのは、ハイビジョンじゃなくて、テレビでインターネット映像を見れないことになる。

 コムキャストは、アメリカ最大のケーブルテレビ会社で、2,400万世帯もお客さんがいる。そのコムキャストが、「Fancast ファンキャスト 」という自社サイトで、先進的な「オープン」施策を行っている。例えば、「24」を検索すると、FOXのネット配信サイト「Hulu」につながる。ケーブルでインターネットサービスに入っていれば、無料で好きなエピソードをリビングのテレビで楽しめる。

 先ほど開催されたCESで、コムキャストのブライアン・ロバーツCEOが、セットトップボックス(STB)のオープン化を打ち出した。このオープン化で(「Tru2way」という名前がついている)あらかじめSTBが内蔵されているテレビが開発され、パソコンと同じようにソフトウェアをダウンロードすると新たな機能が追加できるテレビが売り出されそうだ。

 ビジネス側からみると、このコムキャストのオープン化は、色々な影響を今後もたらす。ケーブル網がインターネットコンテンツをテレビに運ぶことになってしまえば、次は、テレビ端末市場の競争だ。iPodのテレビ版ができて、日本の家電メーカーを脅かすことが起きないとは言い切れない。

 2007年のCESでは、CBSのムーンベスCEOが「コンテンツキャスター」という概念を打ち出した。英語の「“ブロード”キャスター」を「コンテンツ」に言い換えて、テレビ局がよりコンテンツ制作を意識したコンセプトだった。実際に、テレビ局は昨年後半から、番組を放送だけでなくインターネットでも配信を始めた。今年は、STBの「オープン」化だ。オープン化により、インターネットからテレビへ映像を運ぶ道具に次々とイノベーションが起きるだろう。例えば、XboxがコムキャストのSTBになってゲーム、ドラマ、YouTubeがテレビで楽しめることになったり、他にも、San DiskのUSBメモリサービス(Fanfare)は、ネットの動画をメモリにコピーしてテレビで楽しめるようになっている。「ファンキャスト」では、もうコムキャストに加入してなんていわない。テレビに映る映像が放送波だけでなく、インターネット、ケーブル網など多様な流通を通して来る時代が目の前に来ている。

 さて、2009年は・・・次は、コンテンツクリエイターの出番だ。映像、音楽などコンテンツクリエイターたちが、インターネットを通じ、テレビ、モバイル、パソコンなど作品を発表するフリーディストリビューションの年となるに違いない。

ケーブルテレビがインターネット動画を茶の間に運ぶ

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