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志村一隆「ロックメディア」
2008年2月掲載
ロックメディア 第5回

イギリス・コンテンツ総論1:
シティとアールズコート先端と多様な社会


志村一隆(略歴はこちら)
ロンドン・写真1 イギリス人は、発明はするが発展させない国民だそうだ。鉄道、ゴルフ、資本主義、パンクロック・・・産業、スポーツ、思想まで、辿り着いたらイギリスなモノは多い。コンテンツ、メディア業界でも、常に先端的な動きをするのがイギリス事情だ。音楽の無料CD 配布、無料誌の流行、地デジの普及など、メディア、コンテンツの未来はイギリスにある。

「金融業と建設業だけで景気が成り立っていて、何も輸出するモノがない国なんだよ」とは、自分の友人の弁だが、ともかく景気がいいのは確かだ。金融街のシティは、東京の青山かと思うくらい奇抜なビルが建てられ、フェラーリ、ポルシェが路駐されている。地下鉄は初乗り1,000円(4ポンド)、チャイナタウンで炒飯を頼むと2,300円(10ポンド)した。テレビは37型で大体23万円(1,000ポンド)くらいだった。

 景気のよい街には、多様な人が集まる。ポーランド、ルーマニアなど東欧からの移民がロンドンに100 万人以上生活する。ロンドンの小学校は、母国語が英語ではない生徒が50%を超えるエリアもあるそうだ。

ロンドン・写真2 彼らが多く住むのが、ロンドンの地下鉄路線図だと西南のエリアだ。シティからディストリクトライン(路線図だと緑色の路線だ)に乗り、西に向かうとサウンケンジントン、アールズコートくらいあたりで、ロシア語、東欧系の言葉(多分)が車内を飛び交うようになる。ケンジントンといえば、10年前は高級住宅地だったはずだが、今ではロシア資本とインド資本がアパートを買い、ほとんどがホテルになっていた。僕が泊まったホテルは、ロシア人がオーナー、従業員はラトビアとポーランドから来た人たちだった。

 シティのきらびやかさと、アールズコートのちょっとやさぐれた地味な感じが同居するロンドンは、街を歩いているとなんとなくイキイキした雰囲気を肌で感じる。多様な文化を映し出してるかのように、イギリスは先端的な多チャンネル、デジタル配信への取組が活発だ。

 たとえば、イギリスのNHK にあたるBBC は2007年7月にオンライン配信「iPlayer」を開始し、ドラマなどの番組を無料で配信、2008年1月には1週間あたり2,000万人ユーザーが楽しんでいる。テレビ局がコンテンツ制作の中心を担っている点で、日本と似ているのだが、テレビ局自らがディレイ放送、ネット配信を積極的にやっている。

 多チャンネルも、Freeviewという地上デジタル放送が1,400万世帯以上に普及している。Freeviewでは、BBCほか、アメリカ系のチャンネルなど40チャンネルが放送され、全て無料だ。Freeview を見るチューナーは30ポンドくらいだが、電話会社の販促商材として使われていたり、テレビを買うとチューナーが内蔵されているので、コストをかけず誰もが自動的に40チャンネルを見れる仕組みだ。

 コンテンツの多様な見せ方を提示するイギリスの放送で、面白いのはサッカー中継だ。サッカープレミアリーグを生中継で見ようとすると、通常月額8,000円程度かかるBskyB に加入することになる。自分は生中継でなくてもいいという人には、その日の夜10時からBBC で録画放送がある。BskyB は810万件も加入者がいる。(WOWOW の加入者240万世帯、スカパー400万世帯を足してもまだ及ばない)。

ロンドン・写真3 スィンギングロンドンと言われた1960年代。シティとアールズコート、先端と多様さが同居するイギリスは当時の匂いが戻ってきるかのようだ。新しい文化を作り出すイギリスのメディア動向をこれからレポートしていきます。

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