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2008年4月掲載 |
4月のビックリといえば、掛布、バース、岡田のバックスクリーン3連発(1985年4月17日)かヤクルト小早川の3連発(1997年4月4日)だけど、ちょうど1年前のニュースも結構驚いた記憶がある。
1年前の2007年4月13日、グーグルがネット広告代理店「ダブルクリック」を31億ドルで買収すると発表した。 グーグルの「検索」という行為が普通になってから、広告収入でポータルサイトビジネスを成立させるのが難しくなってきた。人々がトップページでなく、直接見たいページに飛んでしまうからだ。 そこで、インターネット広告代理店は、リーチ(数・量)とフリクエンシー(頻度)のスペースを売るバナー広告から、検索結果の「精確さ」を販売するキーワード広告の売上比率を増やしている。 それでも、一定のリーチ数を稼ぐ必要があるので、ガジェットを(11月ComScoreの調査だと利用人数は1.5億人だそうだ)つないで、ロングテールなサイトのページビュー数を合算、広告パッケージとして売り出している。 大手ネット企業は、優れた配信技術をもつネット広告代理店を買収していったのは、精確な検索とそれをつなぐネットワークを強化するためである。
買収がひととおり終わって、広告を配信する仕組みが整うと、今度は配信先(メディア)を増やす競争になる。 そこで、注目を集めたのが、SNS(Social Networking Site)である。 SNSは、フォーマットは共通だけど、中身はカスタマイズできる点が、今の人に受けている。世界一会員が多いといわれる「MySpace」は、約2億人が登録している。ちょっとケタ違いである。SNSの利用者は、とくに10代の利用が多く、その世代の視聴者減少に悩むテレビメディアからの買収対象となっている。
インターネット企業とマスメディア企業は、あまり仲がよくない印象(TBSと楽天、フジテレビとライブドアとか)があるが、アメリカでは結構仲良く色々なかたちで提携が進んでいる。 たとえば、グーグルは、ラジオ、地方新聞、ローカルテレビ、衛星放送といった広告収入が落ちているオールドメディアの広告営業をグーグルが代わりにやり、収益を分配しようというビジネスを進めている。 また、昨秋から始まった4大ネットワーク局の動画配信や、BBCなどの動画配信には、グーグルが買収したダブルクリックが広告配信をしてたり、マイクロソフトの「Silverlight」という動画配信技術が使われている。
そして・・・ 2008年1月31日、マイクロソフトがヤフーに446億ドルの買収提案を行った。 広告代理店を買収、マスメディアと提携を進める大手ネット企業も、グーグルとヤフー、マイクロソフトでは少し事情が違う。 「検索」技術を持つグーグルは、インターネットにコンテンツがあふれるほど検索ニーズが高まり、検索広告ビジネスとして儲かる仕組みになっている。ためしに、CBSの動画配信サイトのバナーとクリックするとグーグルが買収したダブルクリックのURLが表示される。 ポータル事業が中心のヤフー、ソフトウェアが中心のマイクロソフトは、コンテンツ、メディア企業が自社サイトでコンテンツビジネスを始めてしまえば、自前でコンテンツを持たない弱みが露出してしまう。 昨秋からの4大ネットワークの動画配信サイト、“Hulu”、コムキャストの”True2way”・・・コンテンツホルダーが動画をインターネット・ウィンドウに配信、垂直統合型ビジネスを始めると、ヒットコンテンツの蓄積がモノを言う。 そこで、マイクロソフトは、ヤフーの情報系コンテンツを手に入れ、ゲーム機“xBox”、ミドルウェア“Extender”を開発し、インターネットコンテンツのテレビ配信の入り口を握ろうとしている。デジタル時代のコンテンツ・ウィンドウを下流から攻める戦略である。 大手インターネット企業が進める買収戦略は、人々がネット配信のテレビ番組をオンデマンドで見始める「インターネットtoテレビ」な時代を見越したインフラ投資といえる。 長期投資家はいつの時代も、鉄道、エネルギーといったインフラにいち早く投資し、長期でお金もちになる。動画配信が本格的になるのは時間の問題であり、インターネット革命で残された一番大きなビジネスチャンスだろう。 オマケ:
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